ジレンマを越えて、ユーザーに寄り添う進化を選ぶ。カチミル戦略責任者インタビュー

カチミル車買取戦略責任者インタビュー

車を少しでも高く、手間なく売りたい——。
そんなユーザーの声に応えるべく、中古車一括査定サービス「ズバット車買取比較」を20年にわたって運営する株式会社ウェブクルーは、多くの買取事業者とユーザーをつなぐ仕組みを築いてきた。
ウェブ上に簡単な情報入力で複数社に査定を依頼できる“手軽さ”と、業者間競争による“高値売却”の実現を強みとする一方で、紹介できる買取業者が増えるほど、ユーザーにも買取業者にもストレスや負担がかかってしまうという課題も浮き彫りになった
利便性を追求してきたサービスを、より良い体験と価値の提供のため、ウェブクルーは、新サービス「カチミル」をリリースしました。
「カチミル」誕生までの紆余曲折とサービス設計、そして今後の展望について、カチミルの戦略責任者を務める渡辺剛志氏に聞きました。

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目次

便利さの裏に潜む「比較する負担」の問題

1999年の設立以来、くらしのターニングポイントで必要なサービスを比較・選択するための仕組みを提供する株式会社ウェブクルー。
経営理念である「見えないものを見えるように わかりにくいものをわかりやすく」を事業設計の根幹に据え、情報の非対称性を解消して消費者と企業をフラットにつないできました。

中古車分野でも、一括査定サービスの先駆けとなる「ズバット車買取比較」を長年運営しています。

渡辺:「ズバット車買取比較」は、比較サービスらしい非常にシンプルな送客モデルです。ユーザーさまには、1回の入力で複数社に見積もりや査定を依頼できる手軽さと、業者間の競争原理が働くことで高値での売却が見込める点を評価いただき、長くサービスを提供してきました。

私たちは、ユーザーさまに多くの選択肢を提供することを使命と考え、多くの買取事業者さまに加盟いただき、両者のマッチングを支援する取り組みを推進してきました。

カチミル渡辺剛志氏

渡辺 剛志(わたなべ・つよし)氏
株式会社ウェブクルー メディア事業本部 副統括

関連会社の保険代理店で10年にわたって営業やコールセンター運営、マネジメント業務などを経験した後、コールセンター業務の委託を受けたことがきっかけで2019年に株式会社ウェブクルーに転籍。車領域の営業を経て2020年から事業責任者に。社内で長年問題視されながら進退窮まっていた中古車一括査定サービスの課題にメスを入れ、2025年から「カチミル」を率いる。

渡辺:一方で、このモデルには、無視できない課題があることにも以前から気づいていました

それは、紹介できる買取事業者さまが増えることによって生じる、ユーザーさまの比較体験の悪化です。
ユーザー情報を受け取った買取事業者さまは、現車査定のために申込直後から電話連絡を行います。紹介できる業者数が多いほど、着信履歴が増え、結果的に比較する負担が大きくなるケースが少なくありません。

ウェブクルーはあくまでも情報の仲介する立場であり、買取事業者さまがユーザーさまとコンタクトをとって出張査定や来店査定につなげるプロセスには介在しませんが、我々のサービスによってこうした事態が引き起こされていることには大きな責任を感じていました。

では、なぜ会社としてすぐに対策を講じないのかとお考えになるかもしれません。私たちがなかなか1歩を踏み出せずにいた理由は、大きく2つあります。

1つは、一括査定依頼サービスの利便性を好むユーザーさまも多くいること。実際に、「申し込んでからすぐに対応してくれて助かった」というお声も多く、スピーディーに買取事業者さまとつながれる点をメリットと感じていただいてました。
もう1つは、送客モデルが非常に収益性の高い仕組みであることです。ウェブクルーと買取事業者さまの契約は「リード提供型の送客契約」であり、ユーザー情報1件ごとに紹介手数料をいただく形になっています。申し込み件数や紹介可能な業者数が増えるほど収益も拡大する、安定性の高いビジネスモデルであり、結果として継続的なサービス提供を長年にわたって実現できていたことも事実でした。

実は10年ほど前から、社内では「一括査定サービスによる体験の低下に目を向けるべきではないか」という声も上がっていました。しかし、利便性や収益性という明確なメリットと、体験悪化というデメリットの間で揺れ動き、有効な解決策を探しながらここまで来たというのが正直なところです。

三方良しをめざす新しい中古車売却のかたち

長年のジレンマを断ち切り、変革へと踏み出すきっかけになったのは、相次ぐ不祥事によって中古車業界全体に対する不信感が高まったことでした。

渡辺:2020年代になり、車買取業界の中で、組織的な不正が行われていたことが明らかになり、業界の不透明さや強引な営業体質に批判が集中しました。
中古車業界に対する世間の不安と不信はひしひしと伝わってきましたし、業界に関わる私たち媒体の姿勢にも厳しい目が注がれていると感じました。

世の中に誇れる仕事をしなければ――。そのように社員一人ひとりの中に芽生えた自覚の大きさは、10年以上抱えてきたジレンマを打ち破るには十分でした。ちょうど競合が台頭してきた時期でもあり、「変革」をテーマに掲げてユーザーに寄り添うサービスへの転換をはかることになりました。

最初に取り組んだのは、「納得できるサービス体験はどうすれば実現できるか」を考え、理想的なサービスの形を逆算することです。

中古車査定サービスの形式には、私たちが長く提供してきた一括査定方式のほか、近年台頭してきたオークション形式、さらにはその中間に位置する事前入札形式があります。それぞれの形式のメリットデメリットを徹底的に調査し、従来の一括査定サービスの「早さ」の面でのメリットを踏襲しつつ、ユーザーさまも買取事業者さまも納得できるマッチングの仕組みは事前入札+コンシェルジュ対応型だという決断に至りました。
事前入札形式は、ユーザーさまが入力した情報をもとに、複数業者の「事前査定額」がマイページ等に開示され、それをもとに、ユーザーさま自身に現車確認(実査定)を希望する買取業者さまを選んでもらう方法です。この方式なら、入札金額をWeb上で確認できるため、情報の非対称性による不利な状況や、市場の機能不全も未然に防ぐことができます。また、ユーザーさまの個人情報は現車査定を希望した買取業者さまのみに送られる仕組みを採用し、より安心してご利用いただけるサービス設計を採用することにしました。

さらにプラットフォーマーである当社も、収益モデルの持続性を保ちながらユーザー体験を改善し、信頼性の高い「新しい中古車売却のスタンダード」を確立することで他社との差別化を図ることができると考えています。
自社の利益だけでなく、ユーザーさまや買取事業者さまの満足、そして社会的な満足も同時に追求する「三方良し」は、当社CEOの藤島義琢がめざす企業の姿でもあります。新サービス「カチミル」は、こうしてスタートしました。

人とAIの共創で“安心と効率”の両立へ

2025年6月にリリースされた新サービス「カチミル」の大きな特徴の一つに、コンシェルジュの存在があります。

カチミル渡辺剛志氏

渡辺:入札が締め切られると、カチミルコンシェルジュが売却先の決定を支援するほか、現車確認(実際に車を見て査定する作業)の日程調整をはじめとした買取事業者さまとのやりとりをすべて代行します。
よって、ユーザーさまと買取事業者さまとの間にはやりとりが発生しません。対応にかかる手間と時間を大幅に削減しながら透明性の高い売却を実現できるようになりました

サービスのローンチに向け、長年対応してきたカスタマーサポートチームから優秀なスタッフをコンシェルジュとして招聘したため、対応品質も申し分ありません。実際、サービスをお使いいただいたユーザーさまからは、コンシェルジュのサポートに助けられたとの声を多くいただいています。

しかし、これから対応件数が増えていくことを考慮すると、スタッフの対応に依存する労働集約型モデルにも限界が来ます。今後は、「ユーザーさまに寄り添ってともに考える」「根拠を提示して背中を押す」といった人間にしかできない対応をコンシェルジュが担い、定型的な対応はAIに任せるなどの業務の切り分けを考えていく必要があると考えています。
同時に、従来の「ズバット車買取比較」で多くのユーザーさまに評価していただいていた利便性も追求していかなければなりません。
事例として、カチミルでは株式会社ユーストカードットコム様が保有する車種マスタ(各車両の諸元データ/カタログデータ)とAPI連携し、車検証情報のうち型式指定番号、類別区分番号を査定依頼フォームに入力するだけで年式やグレード、装備といった車両情報が正確に自動入力される仕組みを導入しました。事前入札の概算価格を出す上では、車両情報の正確性がポイントの一つでもあり、車検証情報から手間なく情報登録が可能な仕組みを構築しました。

将来的には、現車確認のプロセスさえも省き、査定申込みから買取まで一貫してオンラインで完結できるサービスをめざして進化を続けていきたいと思っています。

どれだけ進化しても、社員が誇れるサービスであり続けたい

変革の期待を背負って走り出した「カチミル」が順調に認知を拡大するなか、渡辺氏は
「どんなに成長しても、社員が社会に誇れるサービスであり続けたい」と展望を語ります。

渡辺:ちょっと恥ずかしい話ですが、以前当社のメンバーに「自分が車を売るときに使ったサービスは何か」「家族に勧めたいサービスは何か」と聞いたところ、当社の「ズバット車買取比較」以外の回答が少なからずあったんです。悲しいことですが、これが現実だと思いました。
すべての人に肯定され、歓迎されるのは難しいかもしれませんが、少なくとも社員が自信をもって周りの人にすすめられるサービスをつくりたい。社会的意義のあるサービスにしたいそう思って「カチミル」の設計に力を注いできましたし、その思いこそが「カチミル」の原点だと思っています。

これからも、「社員が世の中に誇れるサービスであること」をサービス改善の軸として、よりよいサービスを目指していきたいですね。

※この記事は2025年11月時点の情報で制作しています

この記事で紹介したサービス

サービス

サービス名カチミル
タイプ事前入札型
紹介業者数複数社
仲介対応範囲申込みから買取店との現車査定日の日程調整まで
申込後キャンセル可能
対応地域全国

セールスポイント

  • Webで概算査定額が確認できる
    車検証の情報をもとに、全国の買取店からリアルタイムで入札が入り、最高額がWeb上で可視化されます。買取価格の相場を把握しやすく、比較検討に役立ちます。
  • 買取店との日程調整はコンシェルジュが対応
    入札後、ユーザーが現車査定を希望したい会社を選択すると、カチミルのコンシェルジュがアポイント調整を代行してくれます。時間のない人でもスムーズに手続きできます。
  • 現車査定日の調整が完了するまでは個人情報が非開示
    買取店に個人情報が共有されるのは、現車確認を依頼した会社のみ。その他の入札業者には一切開示されず、プライバシー面でも安心です。

企業情報

企業名株式会社ウェブクルー
設立1999年10月1日
事業内容「保険」「引越し」「自動車」「シニア」 「教育」など多様な分野で比較サービスを運営
所在地東京都世田谷区三軒茶屋二丁目11番22号 サンタワーズセンタービル4F
代表者代表取締役社長 藤島 義琢
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