第11回中古自動車査定士技能コンテスト全国大会 52地区の代表が頂点を競う

一般財団法人日本自動車査定協会(JAAI)は2026年7月23日、東京・品川プリンスホテルで「第11回中古自動車査定士技能コンテスト全国大会」を開催した。
同協会の創立60周年を記念する節目の大会。各支所の関係者や選手が所属する販売店の応援団など約300名が見守るなか、全国各支所で1,000人超が参加した地区予選を勝ち抜いた精鋭52名が技を競った。
さらに、同日の60周年記念式典では2027年4月に新たな査定基準を導入する方針も発表され、業界にとって節目にふさわしい一日となった。

電子査定を見どころに挙げた開会挨拶
開会挨拶で大井篤理事長が特に強調したのは、電子査定への注目だった。「今回も実車査定は各支所の予選会と異なり、iPadを用いた電子査定により行います。カーチェックシートへ手書き記入する査定との違いをご確認いただく絶好の機会ですので、ぜひ実車査定をご覧ください」と来場者に呼びかけた。

地区予選では手書きが基本である一方、全国大会ではiPad入力に切り替わる。まだ普及途上にある電子査定を、業界関係者が一堂に集まるこの場で実際に「見て、感じてもらう」——大井理事長の言葉には、全国大会をデジタル化推進の発信の場として活用しようという意図が込められていた。
日常業務の経験と絶え間ない努力の集大成。3部門で400点満点を争う

競技は、2台の車両をiPadのカーチェックシステムで査定・入力する「実車査定」(各25分×2台)、日常の査定業務に関わる幅広い問題に答える「学科試験」(25分)、与えられた情報をカーチェックシートに記入する「机上査定」(25分)の3部門。

実車査定2台で50分、学科・机上各25分、合計100分の競技で400点満点を争う。実車査定は2台合計200点と配分が厚く、全体の半分を占める。
16年目の査定士が最優秀査定士賞

競技の結果、最優秀査定士賞に兵庫ダイハツ販売株式会社の猪野翔太さん(38歳)が選ばれた。猪野さんには経済産業大臣賞・国土交通大臣賞が授与された。
あわせて優秀査定士賞(5名)、優良査定士賞(10名)も発表された。


優勝者インタビュー「最後に名前を呼ばれて、ほっとしました」

「なかなか緊張が出てて、自分の思った通り査定できているのかなという不安が強くて。終わった後はあまり手応えがなかった。優良査定士賞くらい取れたらいいかなという感じで表彰式に臨んでいたんですけど、結果的に一番最後に名前を呼ばれてほっとしています」——猪野さんは受賞の瞬間をそう振り返った。
猪野さんは入社16年目のベテラン査定士。兵庫ダイハツ販売では中古車スタッフとして6年を数え、社内では「査定ができる人」として知られる存在だ。県予選には過去4度出場してきたが、全国大会は今回が初めて。「どうしても全国大会に出たくて、会社に直訴した」と言い、社内予選・兵庫県予選ともに制して今大会に臨んだ。
週1のオークション研修で積んだ2か月
全国大会に向けた準備は5月末から始まった。週1回、オークション会場に足を運び、修復歴のある車を中心に査定を繰り返した。特徴的だったのは、同じ研修に参加していた社内の後輩たちに教えながら学ぶスタイルだ。「間違ったことを教えられないというプレッシャーが、自分にとってよかった」と猪野さんは語る。
競技で意識したのは「見逃しがちな小さな傷やへこみを見落とさないこと」と「車に対して間違った判断をしないこと」。実車査定2台のうち日産キックスは「SUV系が出るのでは」と予測して事前に集中的に練習しており、「やってきた結果が出せた」。一方、普段接する機会の少ないメルセデス・ベンツは「正常な状態なのか修復されている状態なのかが分かりにくかった」と苦戦を認めた。
自己採点は、キックスが7〜8割、ベンツが6割程度、学科試験が8割、机上査定はほぼ満点に近い出来。「最終的に1番になれたのは、実車の方でしっかり結果が出たということなのかな」と冷静に分析した。
会社・先輩への思い
今大会が兵庫ダイハツ販売として初の全国大会出場でもあったことから、会社側も「どういうバックアップをすればよいか分からない」状況だったという。それでも毎週車を見る機会を作ってくれた会社への感謝は大きい。「先輩スタッフのおかげで優勝できたと思っているので、この結果を通してしっかり感謝を伝えたい」と話した。
今後については「これ以上の賞はないので、誇りにしたい」としつつ、後輩への技術継承を見据える。「査定って本当に大事なんだよということをしっかり伝えていきたい。全国大会を目指したいと思ってくれるスタッフが1人でも増えてくれたら嬉しい」と語った。
2027年4月、新たな査定基準へ
同日60周年記念式典では、2027年4月に新たな査定基準を導入する方針が発表された。
背景にあるのは、販売店からの要望や現在の中古車業界のニーズに合わせ、時代に合った査定基準にしていこうというものだ。
大井理事長も「これからも『中古自動車査定制度』の普及、浸透に努力して参りますので、さらに発展するためにみなさまのご指導、ご鞭撻を賜りますようお願い申し上げます」と挨拶で結んでいる。創立60周年の節目に動き始めたこの基準改定が実現すれば、市場との乖離が縮まり、車を売る人にとっても「納得できる査定」にさらに近づいていくことになる。
※この記事は2026年7月時点の情報で制作しています
