MT(マニュアル)車は今後どうなる?売却を見据えた「AT・MT選び」の現実

新車市場でMT車の販売比率は1〜2%まで縮んだ。それでもMT車は消えていない。残存するMT車では車種によってリセールへの影響はまったく異なる。
「MT車の買取相場は今どうなっているのか」──モータージャーナリストの馬弓良輔氏への取材から、車種ごとの実態を整理する。
モータージャーナリストに聞く──MT車のリセールは「壊滅」しているのか

馬弓 良輔(まゆみ・よしすけ)氏
モータージャーナリスト・カートモ編集長
1966年横浜市出身。「じゃらん」副編集長、「エイビーロード」編集長などを経て、2005年から2009年まで「カーセンサー」編集長。その後、楽天市場自動車ジャンル責任者などを務めたのち独立、。現在も自動車や旅行メディアの編集者として活躍。現在は「オートナビガイド by カルモマガジン」を受け継いだ「カートモ」の編集長。
「MT車のリセール」をひとくくりに論じることはできない、と馬弓氏は言う。まず①スポーツカー、②商用車、③一般ユーザー向けの3つに分けて考える必要があり、それぞれでリセールの見え方はまったく異なる。以下、車種カテゴリーごとに整理する。
スポーツカー系──MTが基本、需要も根強い
日本のスポーツカーにはシビック タイプRなどMT一択の車種も珍しくない。ポルシェのように選択肢がある場合でも、MTの需要は根強い。中古市場も同様で、MT志向が濃い層が需要を支えているという。
馬弓:「新車で手が届かなくても、中古車になって価格が下がったら欲しいという人の中にはMT車に乗りたいっていう層がより濃い。中古市場ではMTの流通台数が少ないケースも多いから、そういう意味での希少性もある」
ポルシェのように「DCT(デュアルクラッチトランスミッション※運転操作はATと同じでアクセルとブレーキの2ペダルだけ、免許もAT限定で乗れるが細かく言うとATとは異なる)のほうが速い」という選択肢がある車種でも、MT需要が消えない理由がある。
馬弓:「ポルシェのPDK(DCTのポルシェの名称)って、実際はMTより速いんだよね。サーキット走らせても速い。MTと同じように任意のギアを選択してエンジンを高回転まで回すこともできる。だけど3ペダルは、クラッチ操作を伴うことで運転のうまい下手が露骨に出る。それを扱いこなしてるっていうことで満足感を得る人も多い。ただ速く走りたいんじゃない、うまく車を扱いたいっていう人にMT車が好まれる」

一般ユーザー向け──MTが残る理由は「乗りたい人がいる」から
ワゴンRやスイフトのようなコンパクトカーに設定が残っているのはなぜか。馬弓氏は「2種類のニーズ」があると説明する。
馬弓:「もう自分たちぐらいの世代が最後だと思うけど、マニュアルから入った人でマニュアルが絶対いいっていう層がいる。運転するならATは怖いからMTがいいっていう人のためのワゴンRであり、スイフトなんだよね」
加えてマツダ3のような教習車需要も一定数ある。スイフトやマツダ3のようなグローバル戦略車なら欧州向けにMTがあるので、それを国内にも流すことはメーカーにとっても比較的ハードルが低い。
リセールへの影響については、こうまとめる。
「マニュアルを選んで大きく損することはないと思います。マニュアルが禁止になるという法律はないし。乗れない人が多いっていうだけ」(馬弓氏)
ただし、このボディタイプについてはATのほうが買取金額も高くつきそうだ。
ジムニーはMTが有利──ただし「好きな人が買う車」
迷いが生じやすいのはジムニーだと馬弓氏は言う。
「ATかMTかで迷う人が結構いると思う。家族と共用するとATになっちゃうけど、自分だけだったらMTがいいなとか」(馬弓氏)
リセールだけで言えば、ジムニーはMTのほうがやや有利だという。
馬弓:「ジムニーは使い方で本当にMTが必要っていう、ローレンジの1速が必要っていう人もいる。一方でMTに乗っている自分に満足する人もいる。中古で軽のジムニー買おうっていう人はちょっと普通じゃない車好き(笑)が多いし、スポーツカー好きと方向性は違うけれど根は同じ。ハードコアなMTのジムニーは底堅い人気がありますね」
ワイルドな使い方が似合う車だけに、MTを求めるコア層が中古市場でも一定数いる。ただし市場全体ではATのほうが需要は高く、「ワイドに売れる」という点ではATに分がある。

「好きな車に乗る」が前提、リセールはその先の話
取材を通じて馬弓氏と合意していたのは、「リセールだけでATとMTを選ぶのは本末転倒」ということだ。スポーツカーのMTはリセールも高いが、それはMTを求めるコア層が中古市場を支えているからであり、ATが欲しい人にMTを勧める話ではない。
整理するとこうなる。スポーツカーでMTに設定があるなら、乗り味もリセールも損はしない。ジムニーはMTのほうがわずかに有利だが、家族共用ならATが現実的。ワゴンRやスイフトのコンパクトカーはMT好きのための選択肢として残り続け、リセールで大きく不利になることもない。
「MTの需要は落ちるとこまで落ちたから」と馬弓氏は言う。 MT車の販売比率が1〜2%まで絞られた今、これ以上減る余地は小さく、残った需要は根強い。「好きならMTを選んで問題ない」という結論は、リセールの観点からも裏付けられている。
車買取ジャーナルでは、引き続き売却を見据えた車選びに役立つ情報をお届けしていきます。
※この記事は2026年5月時点の情報で制作しています
