EVバッテリーの再利用が地域インフラに──オークネットとふるさと物語、自治体向け資源循環モデルの実装を開始

電気自動車(EV)の普及に伴い、役目を終えた車載バッテリーの再利用方法が課題となる中、新たな取り組みが始まりました。
2025年7月8日、流通事業などを手がけるオークネット(東京都港区)は、北海道札幌市の地域共創企業・ふるさと物語と業務提携を締結し、自治体向けに使用済みEVバッテリーを地域内で再利用する仕組みの構築に乗り出しました。

脱炭素や再生可能エネルギーの地域実装を後押しする現場で、電動車の「その先の活用」に注目が集まっています。

目次

使用済みEVバッテリーを蓄電設備として再活用

今回の取り組みは、使用済みEVバッテリーを“別の用途で再活用する”仕組みの実装です。

バッテリーを搭載した中古電動車両(EVやPHEV)をモビリティ用途として活用したのち、役目を終えたバッテリーを取り出し、性能を診断したうえで、自律型街路灯や定置型蓄電池に再製品化(リパーパス)します。

技術面ではオークネットが再製品化と導入支援を担い、ふるさと物語が自治体との連携調整を担当します。両社がそれぞれの強みを活かし、技術・制度・地域をつなぐ体制を整備しています。

EV普及とバッテリー再利用のギャップ

近年、EVの販売は着実に増加していますが、車載バッテリーの再活用にはいまだ多くの課題が残されています。

高精度な劣化診断には時間とコストがかかるうえ、中〜低グレードのバッテリーは再活用の用途が限定されており、品質保証の難しさも再利用の妨げとなっています。

そのため、多くの使用済みバッテリーが再利用されずに処分されているのが現実です。

こうした状況の中で、地域での電力利用に向けた再活用の仕組みを構築することは、EVの循環活用を進める上での一つの方向性といえるでしょう。

脱炭素・エネルギー自立を現場から支える

国としては「地域脱炭素ロードマップ」に基づき、再生可能エネルギーの地産地消やエネルギー自立の実現が求められています。

ただし、実装にあたっては以下のような課題が指摘されています。

  • 技術導入の負担やコストの問題
  • 地域住民や関係者間での合意形成の難しさ
  • 導入後の運用体制の構築


今回の取り組みのように、複数の民間事業者が役割を分担し、技術・制度・運用までを一体で設計する構えは、今後の地域実装モデルの一つとして注目されます。

EVの「次の使い方」が選択肢に

EVバッテリーは車両としての役割を終えた後も、一定の蓄電能力を持つ場合があるとされています。
そのため、地域単位での電力活用に転用する仕組みが整えば、EVは単なる「移動手段」にとどまらず、地域のエネルギー支援資源として活用される可能性があります。

現時点では導入地域や実施規模についての詳細は公表されていませんが、実証を重ねながら制度や支援策との連携が進めば、他地域への展開も期待されるでしょう。

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