ハイブリッドよりもガソリンのほうがリセールバリューが高い?買取市場で何が起きているか

ハイブリッドよりもガソリンのほうがリセールバリューが高い?買取市場で何が起きているか

ハイブリッド車は新車価格が数十万円高い分、買取でもその差が反映される──そう信じている人は多いだろう。
ところが一部の車種では、新車時の価格差ほど買取額の差が開かない。購入費用に対して戻ってくる割合でいえば、ガソリン車のほうが高くなることもある
なぜそうなるのか。モータージャーナリストの馬弓良輔氏への取材から、買取市場の構造と売却を見据えた選び方を整理する。

目次

モータージャーナリストに聞く──ガソリン車の買取が「意外に強い」理由

編集部が相場を追うなかで気になったのが、ヴェゼルでガソリンモデルの買取額がハイブリッドほど落ちない、という事例だった。ヴェゼルは国内でも売れ行きが安定していて、ハイブリッドとガソリンの比較がしやすい。

この現象を入口に、「ガソリン車の買取が強く見えるとき、そこで何が起きているのか」を馬弓氏に聞いた。馬弓氏はこれを「極端なケース」と断りながらも、輸出需要と円相場という国内だけでは読めない要因を挙げた。

馬弓 良輔(まゆみ・よしすけ)氏
モータージャーナリスト・カートモ編集長

馬弓 良輔(まゆみ・よしすけ)氏
モータージャーナリスト・カートモ編集長

1966年横浜市出身。「じゃらん」副編集長、「エイビーロード」編集長などを経て、2005年から2009年まで「カーセンサー」編集長。その後、楽天市場自動車ジャンル責任者などを務めたのち独立、。現在も自動車や旅行メディアの編集者として活躍。現在は「オートナビガイド by カルモマガジン」を受け継いだ「カートモ」の編集長。

まず押さえるべき全般論──ハイブリッドが有利な理由

ガソリン車の買取相場が話題になる理由を聞く前に、馬弓氏は「車として優れているのはどちらか」という前提から話し始めた。

「全般的にはハイブリッドだと思うんですよ。もはやどう考えても」(馬弓氏)

その理由は大きく2つある。まず燃費差だ。ハイブリッド車は多くの車種でガソリン車より10km/L前後燃費がよく、ランニングコストの差は5年で相当な額になる。
ヴェゼルで言えばWLTCモード(Honda公式諸元表)でe:HEV X(FF)が26.0km/Lに対し、ガソリンG(FF)は15.0km/L。これはその一例だが、この差は珍しくない。
次に下取り・買取価格で、全般的にハイブリッドのほうが高く出る。

加えて馬弓氏は、「ヴェゼルの場合は動力性能の差も大きい」と付け加えた。これはヴェゼル固有の事情だ。

馬弓:「いまおすすめのSUV、みたいな記事企画だったら、僕は依然としてヴェゼルのハイブリッドをベスト3に入れます。内外装の良さも魅力ですが、ハイブリッドの走りの質感と乗り心地が抜群に良いからです。モーター主役型のホンダのe:HEVや日産のe-POWERは”新しいモノ”を買ったという充実感も味わえます」

まず押さえるべき全般論──ハイブリッドが有利な理由

なぜ一部車種でガソリン車の買取が強く見えるのか

では、乗り物としてはハイブリッドが上なのに、買取相場でガソリンが強く見えることがあるのはなぜか。ヴェゼルを例に挙げながら、馬弓氏は海外への輸出需要を挙げた。

馬弓:「ヴェゼル、それにRAV4などのガソリンモデルの買取が高いというのは、東南アジアなど5年以内の車しか輸入できない国でのニーズが高いからという話ですよね。この手の話で有名なのはアルファードの”マレーシア仕様”です。前型のアルファードもハイブリッドじゃなくて2.5Lのガソリン車、白のサンルーフ付きがすごく人気があった。現地では整備の問題とか耐久性の問題でガソリン車じゃないとって言われてたから」

東南アジアには新車登録から5年以内の中古車しか輸入できない規制を持つ国が多い。車齢規制のある市場では比較的新しい日本車の需要が高く、また整備がしやすいガソリン車に人気が集まっている。それが買取相場を押し上げる一因になっている。
ただし、そのイメージは変わりつつあると馬弓氏は続ける。

馬弓:「ホンダの2モーターのe:HEVはアコード時代から続いてるシステムですが、20万km走ったアコードのタクシーの運転手さんに聞いたら、全然燃費が落ちないし壊れないよと言っていました。トヨタのハイブリッドはさらに長い実績があって、最初のプリウスこそバッテリー交換が起きたけど、その後はほぼ起きてない。10万kmはもちろん、20万kmぐらいまではハイブリッドの駆動用バッテリー劣化ってほとんどないと思います。それに最近の車はガソリンエンジンであっても電子制御の塊だから、整備に診断機が必要なのは同じです。早晩、整備性もハイブリッドシステムを嫌う理由にならなくなっていくのではないでしょうか」

輸出需要と円安──「逆転」が起きる条件

さらに、輸出に影響される買取相場の動きを読むうえで、馬弓氏が強調したのが為替だ。

馬弓:「為替の影響も大きくて、今160円前後ですよね。ちょっと前まで130円とかだったわけだから、20%くらい円安になっています。海外のバイヤーからすると日本の中古車がとても安く見えて、新車に近いコンディションのものをガンガン買ってる」

ドル円が130円台から160円台に動いた分だけ、海外バイヤーにとって日本車は割安になった。円安が続くうちは輸出需要が買取相場を下支えする
一方で、馬弓氏は条件付きの話だと断を入れる。

馬弓:「今後、円が160円が200円になるのか、それとも100円になるのかちょっと分からない。この瞬間、輸出ニーズがあるという理由でヴェゼルのガソリンモデルを買いますか?
5年間ハイブリッドの電動感の溢れる素晴らしいハイブリッドを味わわずに、燃費も1.5倍くらい高いガソリン車にしますか? 円高になったり輸出先の法規が変わったりするリスクもありますよ、と私は思います」

輸出需要は今の相場・為替・規制が揃ったときの話であり、永続的な前提ではない。
ガソリン価格も同じだ。

馬弓:「イラン情勢もあるし、今は政府の補助金でレギュラー160円前後に収まってるけれど、当面160円より安くなる可能性は低いのではないですかね。下手したら昨今のイタリアみたいに300円とかいう世界になったとき、ハイブリッドとガソリン車のランニングコストの差ってさらに広がります」

輸出需要と円安──「逆転」が起きる条件

「ガソリンに頼る購入」への警告

馬弓氏の結論は明快だ。

今買うのだったら、輸出需要があるからといってガソリンモデルにするというのはやめなさい、と私は言いたいです」

その背景として馬弓氏が挙げるのが、世界規模のハイブリッド回帰だ。EVが失速するなか、北米ではハイブリッドが売れていて、この流れはいずれ東南アジアにも波及すると見ている。そうなれば「ガソリン車のほうが輸出で売れる」という前提自体が崩れる。

各メーカーがフルハイブリッドをそろえるなか、ガソリン単独モデルは選ばれにくくなっている。フルハイブリッドは1Lあたり20km前後、条件次第で30km/L台も出る。燃費の良さが広く知れ渡るほど、ガソリン車の立場は厳しくなる。

馬弓:「フルハイブリッドがない車種は軽自動車など一部を除いて基本売れなくなっていくと思いますし、日本マーケットでもその傾向はすでに顕著です。環境意識もさることながら通勤通学はもちろん、週末の趣味などで日常的に車を使う人ほどランニングコストが気になるじゃないですか。イニシャルコストが多少高くても、走れば走るほどハイブリッドの低燃費が挽回していきます。最近のヴェゼルやアルファードと違って、輸出要因がない車種なら手放すときの買取や下取り価格もハイブリッドの方が高いのは間違いありません」

ではリセールで損しないためには具体的に何を選べばいいのか。馬弓氏は、ハイブリッドかガソリンかという軸より先に「その車種が売れているかどうか」が残価を左右すると言う。

馬弓:「ハイブリッドかガソリンかっていうこと以前に、その車が人気あるかどうかっていうのが残価には関わってきます。人気がある=販売ランキングでトップ20ぐらいまでにいる車でフルハイブリッドのモデルだったら、あまり外さないと思います」

売却を見据えて今、何を選ぶべきか

ガソリン車の買取が強く見えるのは、輸出需要・円安・車種固有の条件が重なったときに限った話だ。ヴェゼルはその話を引き出すための入口にすぎない。

馬弓氏の言葉を整理すると、中長期で売却を考えるならハイブリッドを選んでおくほうが無難だ。燃費でも買取価格でも所有中の満足度でもハイブリッドに分がある。輸出相場を当てにしてガソリン車を選ぶのは、為替や規制がひっくり返れば前提ごと崩れる。

残価設定でアルファードとノア・ヴォクシーの月々払いが近くなる、という話がここ5年で広まったように、売却を見越して車を選ぶ意識は確実に広がっている。だからこそ、今の相場の一面だけを見て判断するより、5年後を見据えて選ぶほうがリスクは小さい。

車買取ジャーナルでは、引き続き買取相場の動向を追い、読者が納得して車を売れる情報をお届けしていきます。

※この記事は2026年5月時点の情報で制作しています

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