業界7社が競う「商談力」第一回中古車買取ロールプレイング大会開催【イベントレポート】

業界7社が競う「商談力」第一回中古車買取ロールプレイング大会開催

「業界の常識や風潮を変えていく。企業の垣根を超えて切磋琢磨することに価値があるんです」──。

12月17日、千葉・幕張で開催された「中古車業界 本物のNo.1決定戦」。中古車販売・買取の大手7社から選抜された精鋭たちが、顧客対応力を競い合った。

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競合7社が集結、異例のロールプレイング大会

会場となったネクステージ幕張店にはインディオHD、カーセブン、ガリバー、カレント自動車、シティライト、ネクステージ、ユーポスの7社から、販売・買取部門それぞれ1名ずつ、計14名の代表者が集結した。

注目すべきは、この7社が日頃は顧客を奪い合う「競合」だという点だ。本来なら手の内を明かしたくない相手同士が、今回はあえて同じ舞台に集い、商談の技術を競い合った。

大会の評価基準は、販売や買取の「テクニック」ではなく、CS(顧客満足)とコンプライアンスを重視。各社30分の持ち時間で、提案からクロージングまでの商談を実演し、審査員が採点する形式で行われた。

「非競争領域」で手を組む──主催者が語る開催の狙い

なぜ競合同士が手を組んだのか。主催者に話を聞いた。

本大会の主催者。左から河合力氏(IDOM)、井上貴之氏(カーセブン)、浜脇浩次氏(ネクステージ)、江頭大介氏(カレント)、岩崎孝氏(インディオ)

「多くの会社は、これからもバチバチと競争しなくていい領域、つまり『非競争領域』に関しては協力し合うべきです。業界のことを考えるためにも、そういったところは非競争領域になると思うわけです」

顧客を奪い合う競争はこれからも続く。しかし、業界全体として信頼を高めたり、顧客対応の質を底上げしたりする取り組みは、競合同士の協力によってこそ実現できる──。 こうした考え方が、今回の大会を実現させた。

さらに主催者の一人、株式会社カーセブンデジフィールド 代表取締役社長の井上貴之氏は、ビジネスホテル業界を例に挙げてこう続けた。

「昔はビジネスホテルといえば『寝るだけで安い』場所でしたが、今は地方出張で利用するとクオリティが非常に高くなっています。これはホテル業界がサービスで競い合い、切磋琢磨した結果です。

輸入車・国産の新車ディーラーはお客様から信頼を得ていますが、私たち中古車業界も『新車と変わらないサービスを提供するんだ』という意識で努力しなくてはなりません。そして、現場の人たちが『健全な競争をしている』という意識を持ち、こうした思いを発信することに大きな意義があるのです。」

審査で見えた「根拠を伝える姿勢」

筆者も買取部門の審査員として参加した本大会。審査項目には「話の流れがわかりやすい」「正直に説明している」「売却先によるメリット・デメリットを説明できている」「強引な誘導がない」「他社の悪口を言わない」といった、顧客目線の基準が並んだ。

審査を通じて印象的だったのは、出場者たちの「根拠を伝える姿勢」だ。

通常、オートオークションの相場は顧客には見えない情報とされる。しかし出場者の多くは、その金額を正直に開示し、「この金額から諸経費等をいただくので、この査定額になります」と説明していた。

商売上はデメリットになりかねない情報開示を、あえて行う姿勢が随所に見られた。他にも各社のエースが集まっているだけあり、全体として非常に高いレベルの商談技術が展開された。

優勝者インタビュー「金額が第一ではない、納得してもらうことが大事」

株式会社IDOM(ガリバー)矢内 亨氏

買取部門で優勝したのは、株式会社IDOM(ガリバー)市原平成通り店の矢内亨氏。商談で意識したポイントを聞いた。

「『お客様が金額に納得して、安心して売れるかどうか』という点を大切にしています。ただ希望の金額を聞いて『はい、これで買います』と言っても、後から何とでも言えると思うんです。まずは現状の相場感をしっかり伝えて、『やっぱりこの金額で妥当なんだ』と思ってもらえるように心がけました」

その背景には、業界に対して顧客が抱く根強い不安がある。矢内氏は最近の経験として、初めて買取店を利用するお客様から「しっかりお金は振り込まれるよね?」と尋ねられたエピソードを教えてくれた。

「まだまだこの業界は『怖い場所』だと思われていると痛感しました。だからこそ、単に金額や条件が良いだけでは不十分なんです。事前の丁寧な説明とヒアリングを行い、お客様の不安を解消した上で、期待や希望にしっかりと応えることが重要だと改めて感じています」

最後に受賞について矢内氏は「ガリバーの営業システムや仕組みはどこでも通用するぞ、ということが今日わかったので、ぜひ今後も自信を持ってお客様に向き合っていきたい」と喜びを語った。

来年も開催へ、業界の「指針」を示す場に

今回は正式な組織としてではなく、有志の会社が集まって始めた取り組みだ。来年からは日本自動車流通研究所(JADRI)が主催となり、参画企業をさらに増やして年1回の定期開催を目指すという。大会の略称も検討中だ。

「我々が『どういうサービスをユーザーに提供するか』ということを、業界を代表して示す指針(コンテスト)があるわけです。ぜひ皆さん、また来年も参加していただきたいですし、この1年間、切磋琢磨しながら頑張っていきましょう」

主催者の一人、カーセブン井上氏は、出場者たちにそう呼びかけた。

取材を終えて

車買取ジャーナルが実施した調査では、76.9%の買取業者が「顧客からの安心・信頼に関する質問が増えた」と回答している。一部の不祥事報道により、業界全体への不信感が広がっている現状は否めない。

しかし今回の大会で見えたのは、その逆風の中で、透明性と誠実さを武器に信頼回復を目指す事業者たちの姿だった。競合同士が「非競争領域」で手を組み、顧客視点の商談力を高め合う──。

業界は、確実に変わろうとしている。

※この記事は2025年12月時点の情報で制作しています

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