自動車リサイクル会議2025「2026年の再生材義務化で車買取はどう変わる?」【イベントレポート】

自動車リサイクル会議2025

公益財団法人自動車リサイクル促進センターは2025年11月4日、「自動車リサイクル会議2025」を開催。テーマは「循環型社会実現への道~プラスチック・ガラスリサイクルの現状と課題~」。

自動車リサイクル法施行から20年を迎える節目の年に、プラスチックやガラスの高度循環に向けた最新動向と実務における取り組み事例が共有された。

廃車由来の素材、特にプラスチックやガラスのリサイクル方法が変わりつつあることは、車買取市場にとっても無関係ではない。廃車の資源価値が見直されれば、買取価格にも影響を及ぼす可能性がある。

目次

会議の概要

会議は東京都港区のAP浜松町とオンラインを併用したハイブリッド方式で実施され、リサイクル関連の幅広い業種から参加者が集まった。

プログラムは基調講演、特別講演、および4つの事例発表で構成され、基調講演では神奈川大学の山本雅資教授が「イノベーションと競争条件から考える循環経済」と題して経済学的視点から循環型社会を論じ、特別講演では弁護士法人イノベンティアの町野静弁護士が「プラスチックに関する国内外の政策動向」について解説した。

事例発表では、全日本プラスチックリサイクル工業会、一般社団法人板硝子協会、西日本オートリサイクル株式会社、株式会社ヒラキンの各登壇者が、それぞれの立場からマテリアルリサイクルや板ガラスリサイクル、解体・破砕現場での具体的な取り組みを紹介した。

特別講演:再生材利用義務化の衝撃

記事内の資料提供:自動車リサイクル促進センター

町野静弁護士(弁護士法人イノベンティア)による特別講演では、プラスチックを中心とした資源リサイクルに関する国内外の規制動向が整理された。国内外でリサイクル関連の規制は強まっており、資源循環やカーボンニュートラルの実現に向けて自動車業界にも再生材利用が今後一層求められる流れがある。

具体的には、2025年に成立した資源有効利用促進法の改正により、2026年4月から自動車業界への再生材利用義務化が始まることに言及。ただしこの法律は「規制法」ではなく「促進法」という性格付けで、再生材の利用推進を通じて産業界の循環経済移行を後押しする点が強調された。

国際的なSDGsやG20の動向、国際プラスチック条約の合意形成の難しさなども触れられ、今後のリサイクルルールの変化が自動車業界全体の前提条件として大きなインパクトを持つという。

マテリアルリサイクル事業者の挑戦

全日本プラスチックリサイクル工業会会長の磯野正幸氏(いその株式会社)は、「マテリアルリサイクルの取組事例」と題し、廃車由来プラスチックの「Car to Car」リサイクルの現状と課題を報告した。

1957年操業の同社は、各種廃プラスチックをベースに、バージン材と同等品質のエコプラスチックを材料設計・コンパウンドする技術を持ち、国内複数の自動車メーカーで指定材として採用されている。

また、廃車由来プラスチックだけでなく、一般家庭などから排出される「衣装ケース」の回収にも取り組んでいる。特に、衣装ケースに使用されるポリプロピレン(PP)は、廃車に用いられている樹脂と同様であり、そのリサイクル資源としての有効活用が期待されている。しかし、現場で回収者自身が粉砕を行うのは技術的・設備的にハードルが高く、現状では同社のある名古屋地区に限って粉砕対応が可能となっているのが実情である。

磯野氏は、工程内端材(PIR)の流通資源が減少しプレイヤーが増える中、廃車由来のプラスチック(ELV-plastics)を「ブルーオーシャンな再生資源」として確保することが急務だと指摘。豊田合成との協業事例では、廃車回収PPを50%含有しても新材同等の性能を持つ再生プラを開発し実用化している。

ただし、ELV由来PPのリサイクルには課題もある。調達安定性(廃車が日替わりで不安定供給となること)と、品質の合わせこみ(自動車メーカー各社で異なるスペックへの対応)が挙げられた。同社は2030年までにELV-PPの回収量を20,000t/年にすることを目標としている。

板ガラスリサイクルの品質課題

一般社団法人板硝子協会の伊東弘之特任理事は、「板ガラスリサイクルへの取組み」と題し、自動車用ガラスリサイクルにおける品質課題と実証事業の進捗を報告した。

板ガラスリサイクルの目的は、カーボンニュートラル(バージン原料削減によるエンボディドカーボンの最小化)と資源確保(経済安全保障)にあると伊東氏は説明。しかし、ガラス製造原料として廃棄物由来のガラス屑(ポストカレット)を用いる場合、金属アルミニウムやニッケルといった致命的な異物混入が生じると、溶解や強化などの工程で突発的なガラス割れ(突発破損)が発生し、生産に大きな支障が出る。そのため、特別な取り扱いや厳密な分別が不可欠となっている。

自動車分野の推定資源量は10万トン/年。同協会では自動車解体事業者を中心とする回収コンソーシアムの創設を目指している。

2024年度のJ-FAR(自動車リサイクル高度化財団)による実証事業では、約200台分のELVから2.8トンの自動車用ガラスを回収して品質調査を行った。その結果、合わせガラスの中間膜の除去不足(フロントガラス)や、防曇用熱線(銀プリント)・黒セラミックプリントの除去不十分(リアガラス)などが主な課題として特定されたという。

加えて、会場からは「実際にガラスを回収・輸送する場合、輸送コストと見合わないのではないか」という指摘も出された。今後は2025年度の改訂ガイドラインに基づき品質確認試験を継続しつつ、経済合理性の検討も含めてコンソーシアムの構築・コスト分析・改善を進めていく方針だ。

破砕業者の葛藤:品質とコストの狭間で

株式会社ヒラキンの奥田泰史マテリアル推進課課長は、「破砕業者の取組」と題し、シュレッダー業者の視点から、プラスチック・ガラスリサイクルの現状と課題を報告した。

破砕業者として、シュレッダー処理後のダスト(ASR由来MIXプラ)からプラスチックを回収する取り組みを開始。同社の樹脂選別ラインは、風力選別、浮沈槽(比重差選別)、色彩選別機などを組み合わせ、高品質な原料を生み出すことを目指している。

奥田氏は「ミックスプラスチックに取り組む葛藤」として、ダストからの回収は安価に物量を確保できる利点がある一方で、ミックスプラの選別は難しい。メーカーやコンパウンダーが求める品質基準(ストライクゾーン)が非常に狭く、コストも莫大にかかる点が課題だと語った。

また、品質を保持して安定した供給を行うには、自動車由来でない素材(例:木くず)を混入させないよう徹底すること、またゴムなどの異物を除去するための「設備の改善」が必要だと説明。Car to Car実現のためにはオールジャパンのパワーが必要であり、使いやすい設備投資費用の補助金制度の創設を要望した。

解体事業者の最前線:精緻な解体と地域循環

西日本オートリサイクル株式会社の倉光紀一郎技術課課長は、「自動車解体事業者の取組事例」と題し、解体事業者の立場から、ASRを発生させない「全部利用法」を用いた精緻な解体の実施状況を報告した。

同社は「車の完全なリサイクル」を目指し、ASRを発生させない全部利用法(自動車リサイクル法第31条認定)で解体・資源回収を実施。手バラシと解体機を併用し、燃料、オイル類、非鉄部品、電子基板など、多様な部品の精緻な回収を行っており、その回収された鉄源は製鉄所で自動車鋼板に再生される仕組みだ。

プラスチック・ガラス回収については、バンパー及び内装樹脂の回収のため樹脂破砕・粉砕設備を保有。ガラス回収では、エア式オートチゼルや超硬チップ付きのガラスハンマーといった専用工具を使用し、サイドガラス、リアガラス、フロントガラスを回収している。

倉光氏が強調したのは、地域内資源循環の実現だ。回収したガラスや樹脂は、北九州エコタウン内に立地する株式会社西日本ガラスリサイクルセンターやいその株式会社といった近距離の動脈・静脈企業へ出荷され、輸送負荷の低減と地域内資源循環の実現を目指したリサイクル体制が構築されている。

また、電気自動車の普及を見据え、リチウムイオンバッテリー(LIB)ユニットの取り出し自動化装置(車両傾転装置)を開発した事例も紹介された。

【インタビュー】西日本オートリサイクル・倉光紀一郎氏に聞く

会議後、西日本オートリサイクル株式会社の倉光紀一郎技術課課長に、車買取市場との関連について詳しく話を伺った。

2026年4月開始の資源回収インセンティブ制度が始まれば、最終的に一般の方が車を売却する際の価格にも影響はあるのでしょうか。

インセンティブ制度の影響は一般のお客さんには、ないといっていいでしょう、一方で、解体業者側には影響があります。これまでガラスを回収しても単価が安く、全然見合わなかったのですが、インセンティブで単価が上乗せされる形になるので、回収しようという意欲が出てきます。課題としては、他社からの持ち込みも含めた管理体制や、仕分け・保管のための敷地確保となりそうです。

解体・リサイクルの現場から見て、リサイクルしやすい車、しにくい車はありますか。例えば、年式、メーカー、車種によって、プラスチックやガラスの回収効率に差はあるのでしょうか。

新しい車ほど、リサイクルに向けた作り方をしていただいています。車種でいえば、軽自動車やコンパクトカーぐらいまでが、内装樹脂は結構量が取れます。高級車になってくると、トリムに触り心地の良い素材を使ったり、いろんなものが付いてくるので、取れなくなってしまうのです。つまり、リサイクルしやすいのは廉価な内装の車ともいえますが、そういう車こそ地球に優しいということになります。

発表では、北九州エコタウン内での地域循環モデルを紹介されていました。この「地産地消型」のリサイクルは、他の地域でも実現可能なのでしょうか。

自治体次第だと思います。北九州は先進的にこうした取り組みをやってきましたが、単価が安いものでも、近いからすぐ持っていけるという利点があり、お陰で今では物流コストをかなり抑えられています。各地にこのような拠点ができてくれば、全国でリサイクルのあり方が変わっていくのではないかと期待しいます。

取材を終えて

今回の会議で明らかになったのは、廃車由来のプラスチックやガラスが「廃棄物」から「資源」へと位置づけが変わろうとしている転換点にあるということだ。2026年4月施行の資源有効利用促進法改正により、自動車メーカーには再生プラスチックの利用が義務化される。

会議では、サプライチェーン各所での課題が共有された。再生材製造では調達の安定性、破砕工程では異物除去のコスト、ガラス回収では中間膜の除去技術、解体現場では精緻な作業と経済性の両立という障壁が浮き彫りになった。一方で、北九州エコタウンのような地域内連携モデルも実現しつつある。

車買取専門メディアとしての視点でいえば、廃車由来の素材が自動車メーカーにとって 「調達すべき資源」となれば、廃車の資源価値が見直される可能性がある。特に、走行距離 が長い車や年式の古い車、事故車など、従来は廃車・解体ルートとなる車両の買取価格に影響を及ぼす可能性がある。

ただし、それが実現するには、解体から破砕、再生材製造、自動車メーカーへの供給までのサプライチェーン全体での連携が不可欠だ。短期的には大きな価格変動は見込みにくいが、 中長期的には、リサイクル体制が整備された地域や事業者ネットワークでは、廃車の資源価値が見直される可能性がある。

車買取市場の川下で起きている構造変化を、引き続き注視していきたい。

※自動車リサイクル会議2025の詳細および講演資料は、公益財団法人自動車リサイクル促進センターの公式ウェブサイトで公開されています。
※この記事は2025年11月時点の情報で制作しています

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