「高く売れた」を一緒に喜べる車買取でありたい。ユーカーパック車買取経営者に聞く

ユーカーパック経営者インタビュー

「売却の判断は、自分で納得したうえで下したい」
そんな思いを抱く人にとって、従来の中古車買取には、いまだ越えがたい壁があります。
一括査定にありがちな営業ラッシュ、そして情報の非対称性──。
その“あたりまえ”に疑問を投げかけたのが、UcarPAC株式会社の代表・中谷圭吾氏です。
自社開発の「ユーカーパック」は、最大8,000社が入札に参加するCtoB型の車買取オークション。
情報の透明性と価格競争を両立させたこの仕組みは、「高く、納得して売る」という体験を目指すユーザーに支持されています。
中古車業界に30年携わってきた中谷氏に、その原点と目指す未来を伺いました。

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目次

車買取の闇に見た、健全な未来を目指すビジネスモデル

中古車流通の最前線に30年近く身を置いてきた中谷氏。
業界との出会いは、かつて参加した業者間オークションで目の当たりにした“ある違和感”でした。
その体験を機に、流通の仕組みそのものに強い関心を持ち、「もっと透明で、納得できる取引の形があるはずだ」と考えるようになったといいます。

中谷:そのオークションでは、私が少し前に自分で購入した車とまったく同じモデルが、半額ほどの価格で売られていました。それを見たときは、正直ショックでしたが、ただ同時に、「これは面白い」と感じたんです。もともと車が好きでしたし、ビジネスの仕組みを考えるのも好きだったので、知らないことばかりの車流通の世界に強く惹かれました。 

中谷圭吾(なかたに・けいご)氏
UcarPAC株式会社 代表取締役社長

1975年生まれ、千葉県出身。
中古車の輸出業務を皮切りに、中古車販売会社の設立やオークションバイヤーネットワークの構築、若年層向け車関連サイトの運営など、幅広く車流通に携わってきた。
長年の経験を通じて抱いた「理想の中古車流通」のかたちを実現すべく、2012年にUcarPAC株式会社を設立。業界に新たな流れをもたらす挑戦を続けている。

それからというもの、毎日のようにオークションに通っていました。通ううちに気づいたのは、「情報の民主化が進んでいない」ということです。買取業者は多くの情報を持っていますが、車を売る個人は何も知らないまま取引が進んでいく。こうした情報の非対称性がなくなったら、業界はどう変わるだろう――そんなふうに考えたときに、「これは大きなサービスにつながる」と直感したんです。

車業界には、まだまだ改善の余地があると感じていました。ユーザーが安心して使え、よりよい体験ができるサービスを作りたい。安く買えば褒められるのではなく、高く売れる方が褒められる世界をつくることで、業界全体の健全化が進むのではないか。

そんな想いで、ユーザーに有利なビジネスモデルを業界で初めて提供しようと立ち上げたのが、ユーカーパックです。

UcarPACの事業テーマは「中古車流通の革新」。その中核を担うのが、データテクノロジーです。これまで車を1台売るのに、オークション、査定、販売店と何度も場所を移動しなければならず、大きなコストがかかっていましたが、正確なデータがあれば車を動かす必要がなく、個人と業者の取引も、業者同士の取引もオンラインで完結できます。「情報の透明性も保たれ、一物一価での安心・安全な取引が実現する」そんな“データだけで流通する世界”を、創業当初から描いていました。

個人が出品し、業者が買い取る。オークション形式で車買取に新風を

「個人情報の提供に不安を感じる」「何度も査定を受けるのは面倒」「結局、いくらが“適正価格”なのかわからない」——。車を売ろうとするユーザーが直面する、そうした課題に対し、UcarPACが具体的な解決策として提供したのが、車買取オークション「ユーカーパック」です。

2016年にリリースされたこのサービスは、個人が出品し、全国約8,000社の業者が入札するCtoB形式のオークションを採用。ユーカーパックはその“仲介役”として、査定から成約までをサポートします。

中谷:以前の中古車買取では、ユーザー側は車の本当の価値がわからないまま、目の前の買取業者を信じるしかありませんでした。一括査定サービスが始まってからは、複数社の見積もりを比較できるようにはなりましたが、そのぶん「車を売りたい人」の個人情報が各社に渡ってしまい、営業合戦に巻き込まれるという新たな問題も生まれてしまったんです。

そうした課題をすべて解決するにはどうしたらいいか。そこで考えたのが、車買取オークションという仕組みでした。

これは1台の車を、全国約8,000社の業者に競り合ってもらい、一番高く買い取ってくれる業者に落札してもらうというサービスです。ユーザーに手数料は一切かかりませんし、査定も一度だけ。オークションは車両情報のみで行われるので、成約まで個人情報を明かす必要もない。さらに、成約後のキャンセルもありません。

つまり、ユーザーが安心して車を出品できて、しかも一物一価で高く売れる。そんな、ユーザー目線での不安や面倒をすべて取り除くためにたどり着いたのが、このCtoBオークションの仲介という形だったんです。

当時、個人が出品するCtoBのオートオークションというのは存在しておらず、ユーカーパックはまったく新しいビジネスモデルでした。ですので、仕組み自体を一からつくるところから始めました。車両ユーザーにとっても、業者にとっても、安心して利用できる保証制度も自社で整備しました。

とはいえ、サービス開始当初は、認知もまったくない状態。使ってもらえるのかどうか、不安も大きかったですね。広告にも注力しましたが、一番効果があったのは、自社の査定や買取実績のデータをすべて公開したことだと思っています。ああいう形でデータをオープンにする会社って、当時は本当に珍しかったんです。

その結果、検索からのアクセスが増えましたし、ユーザーにとっても買取価格交渉の材料になりました。同じ車種・グレード・カラーの車がいくらで売れたかがわかるので、適正価格での取引がしやすくなったのではないかと感じています。

そして、業者側にとってもメリットがあります。現車確認ができないオークションでは、やはり一定のリスクがありますよね。でも、UcarPACでは、オークション情報と実車に差異があった場合には、ユーカーパックが責任を持つようにしています。ですので、ユーザー側は成約後にキャンセルされる心配がないし、業者側も安心して買い取りができる。そういう仕組みになっているんです。

今では、ユーカーパックの成約率は約50%。また、私たちは取引データをすべて公開しているだけでなく、独自に開発したMAT(モビリティアセットテクノロジー)を使って、将来の価格予測まで提示できるようになっています。

実際、他社で見積もりを取ったうえで、うちを選んでくれるユーザーも多いですし、「個人情報が流れないのが安心だった」「下取りより高く売れた」といった声もたくさん届いています。

サービスに託した想いを、かかわるすべての人に共有

ユーザーも買い取り業者も、安心して取引できる――。

そんな健全な車買取のプラットフォームづくりに込めた中谷氏の想いは、UcarPACの企業文化にも色濃く息づいています。

キーワードは「当事者意識」「正義への挑戦」「最善の更新」。その意味を、中谷氏はこう語ります。

中谷:「正義への挑戦」というのは、ユーザーゴールを最優先にした仕組みをつくり続けていくということです。「当事者意識」は、自分ごととして責任を持ち、意思決定するという姿勢。そして「最善の更新」とは、変化の激しい時代にあって、常に最適なサービスを模索し続けること。

この3つの価値観を、社内全体で共有することを何より大切にしています。

すべてのスタッフとこうした想いを共有するため、私も出席できる会議にはすべて顔を出し、各課題のゴールがユーザー視点に立ったものになっているかをメンバーと一緒に確認しています。課題の解決プロセスを共にすることで、理念も自然と共有されると考えているからです。

また、実際にユーザーと接することになる外部パートナーの査定員の方々にも、まずUcarPACの理念を理解してもらうことを徹底しています。

実際に、この査定データですべての取り引きが行われるうえ、データの間違いによるクレームはUcarPACの責任になりますから、社外パートナーであっても当事者意識を持っていただくのは絶対に必要なことなんです。UcarPACの理念やサービスを理解した状態で、「ユーカーパックの査定の者です」と訪問していただくことが大切だと思っています。

社内外を問わず、ユーカーパックに関わるすべての人が、このサービスがユーザーファーストであることを理解し、ひとつにまとまっている。そこに、私たちの強さがあると思っています。

そもそも私たちは「仲介」という立場なので、出品車が高く売れれば売れるほど、UcarPACとしての利益も上がります。つまり、買取業者のように「安く買って高く売る」必要がないんです。

社内には元買取店出身や、一括査定営業の経験者もいますが、そうした人たちも含めて、「ユーザーが高く売れて喜ぶ世界を、一緒に実現したい」と共感してくれる仲間が多いんですよ。

このユーカーパックの仕組みが、車買取業界全体の健全化にもつながっていけばと、心から願っています。

データで車買取業界を革新し続ける

2012年の創業から約10年。テクノロジーの進化や社会の意識変化により、車の流通を取り巻く環境も大きく変わりつつあります。UcarPACが当初から掲げてきたビジョンは、現在どのようにアップデートされているのか。中谷氏に、これからの展望を聞きました。

中谷:車買取オークションの構想を立てた当初に比べると、思ったよりもスピードはゆっくりかもしれませんが、それでもデータの力で情報の非対称性が少しずつ解消されてきている実感はあります。近年、車業界のいろいろな問題が表面化したことで、ユーザー自身が調べるようになり、情報コンテンツも増え、知識のある消費者が育ってきた。そういう動きが進むと、自然と健全な取引も増えていくと思います。そこに、UcarPACとして少なからず貢献できているのではという手応えもあります。

創業当時から掲げていた「データだけで車を流通させる世界をつくる」という理想は、今でも変わっていません。今年リリースした「ユーカーパック アプリ」も、その理想を実現するための大事な一歩です。

このアプリは、「車の売却価格を知りたい」「高く売れるタイミングを知りたい」といったニーズに応えるもので、愛車を登録すると、車両データがデジタル上に蓄積されていきます。データが十分に集まれば、スマホひとつで車の売買が完結できる未来が見えてくる。いよいよ、創業時に描いていた構想が現実味を帯びてきたなと感じています。

一方で、査定員の人手が足りず、対応をお待たせしてしまうことも増えてきました。そこで新たに、ユーザー自身で査定ができる「セルフ査定」機能もスタートしました。これによって、さらにスムーズに出品できるようになりましたし、今では車に乗ったままデータだけで売買ができる状態が整ってきています。

ユーカーパックは、出品に手数料がかかりませんし、売れなければ損をすることもありません。車の売却を考えている方だけでなく、まだ売る予定はないけれど愛車の価値を知りたい、という方にもぜひ使ってみてほしいと思っています。

取材を終えて

「高く売れることを、ユーザーと一緒に喜べる世界をつくりたい」。
中谷氏のこの言葉には、長年にわたり車業界と向き合い、構造的な課題に挑み続けてきた人物ならではの想いと矜持がにじんでいます。
個人情報の流出リスクや営業電話といった、従来の“一括査定の壁”を乗り越えた先に、中谷氏が描いたのは「ユーザーも業者も安心して取引できるオークション」という新しい常識でした。車の価値が正当に評価され、ユーザーが自らの意思で手放せる。
車買取を「交渉」ではなく「選択」に変える──その挑戦は、車の売却体験そのものをポジティブなものへと変えていく、大きな一歩に感じられました。

※この記事は2025年7月時点の情報で制作しています

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