「フェア・トレード」の思想がつくる、新たな流通のスタンダード 車買取MOTA経営者に聞く

「彼らの躍進こそ、近年の中古車流通におけるビッグニュースだ」ーー。競合他社をして、そう言わしめる企業があります。
その名は、株式会社MOTA。
資金力のある大手がほぼ独占していた市場に入札制という新たな仕組みを投入し、カスタマーとクライアントのそれぞれにあった「不」を解消することで、短期間で圧倒的なシェアと信頼を獲得しました。その目覚ましい成長は、自社の目先の利益よりも、業界が長年抱えてきた課題の解決を選んだからこその結果でもあります。
本企画では、経営再建の途上にあった前身企業を、業界内で独自の存在感を放つまでに成長させた佐藤大輔代表取締役社長に、社会課題の解決を志すまでのキャリアや、「フェア・トレード」を実現するサービスの在り方、より透明性の高い業界を目指すための新たな取り組みまで、詳しく話を聞きました。

インターネット黎明期だった学生時代、ITでの起業を決意
カスタマーが登録した車に最大20社が入札し、高額の査定をした上位3社のみがカスタマーと交渉できるーー。透明性の高い中古車売買をオンラインで実現するMOTA車買取は、自動車流通市場の課題をDXで解決するサービスです。
その原点は、佐藤社長の大学時代にありました。
佐藤:大学時代、Windows98がリリースされ、誰でも簡単にインターネットへアクセスできるようになりました。インターネットが新たなビジネスの市場となり、現代のネット社会の基盤を構築した多くの起業家が誕生した時代です。
かくいう私も、インターネットに大きな可能性を感じ、起業を夢見るようになりました。ただ、当時はいわゆるネットベンチャーブームの走り。学生起業に対する社会的理解はまだまだ浅く、すぐに起業してもうまくいくとは思えませんでした。
そこで、志を同じくする友人3人と話し合い、それぞれ別の情報系の会社でビジネスの基礎を学ぶことにしたのです。私は人材紹介会社に就職し、求人媒体の紙からWebへの過渡期を経験しました。基礎的なWeb技術から現代的なマーケティング思考まで、広く知識を得ることができて、非常に面白かったですね。

佐藤 大輔(さとう・だいすけ)氏
株式会社MOTA 代表取締役社長
大学在学中、インターネットの登場で世の中が激変する様子を目の当たりにし、ITでの起業を決意。大手人材紹介会社でビジネスの基礎を学びながら二輪車のマッチング事業を開始し、株式会社アール・ジャパンを設立した。2年後のM&Aを経てリクルートへ入社。「社会への貢献」「個人の尊重」「商業的合理性の追求」を経営理念とする同社で視座を高めた後、2度目の起業を経てオートックワン株式会社(現・MOTA)の社長に就任した。現在は「フェア・トレード」の理念のもと、中古車流通の構造的な課題を解消するサービスの拡大に心血を注いでいる。
佐藤:その後、3年ほどして起業をしました。
人材紹介の経験を活かしたマッチングビジネスをやろうとは考えていましたが、大手企業がひしめく市場ではどうあがいても太刀打ちできませんから、大手が参入していない領域で、なおかつ、個人的に好きな商材であれば困難があっても続けられるだろうと思って、オートバイのマッチングサービスを立ち上げたんです。
幸いにも戦略は奏功し、創業初月から売上を計上。2年後には投資ファンドからのM&A提案で高い評価を受け、従業員の雇用を最も重視してくれた企業に売却しました。
そして売却後は友人から誘われる形で、再び会社員としてリクルートにジョインすることになりました。
利己から利他へ、視点と意識が変化
リクルートは、「社会への貢献」「個人の尊重」「商業的合理性の追求」を経営の3原則に掲げる企業。社会の不と向き合うことを社員に求める社風のなかで、佐藤社長には多くの気付きがあったといいます。
佐藤:その頃、リクルートで経験を積んで独立する人は多くいましたが、起業してからリクルートに来る私のような存在はマイノリティでした。好奇心旺盛な人が多い会社でしたから、物珍しさもあったのでしょう。部署や役職を問わず、さまざまな人が私に興味をもち、声をかけてくれたり、飲みに連れて行ってくれたりしました。
おかげで、普通に働いていては接点を持つことができないような人の話を聞き、自分ひとりでは何年かかっても経験しきれない多彩なキャリアを追体験することができたのです。周りの方の視点を借りてものを見ることで、自分の視野を広げることもできたと思います。
特に、大きい会社ならではの投資の仕方や、企業が社会に対して果たすべき役割などについて考える機会に恵まれたのは幸運でした。事業を通じて利益を追求する経済活動と、公益のために事業収益を再投資する社会貢献活動のバランスをとってこそ、企業を長期的に正しい方向へと導けることに気づけたからです。
この気付きを経営に生かしてみたいと、ほどなくして2度目の起業を実行しました。紆余曲折ありながらもブレイクスルーしたところで、また買収の声がかかり、しばらく売却先で経営に携わることになりました。
そこで、親会社が買収したオートックワン株式会社(現MOTA)の経営を建て直してくれないかと依頼されたのです。これが、今につながる大きな転機になりました。
「失敗しない道だけを選んでいていいのか」ーー内省が赤字続きの企業を引き受ける原動力に
実は、佐藤社長にとって、経営の打診があったオートックワン株式会社は既知の存在だったといいます。
佐藤:最初の起業では、オートックワンのビジネスモデルを少し参考にしたこともあったんです。しかし、リクルート時代に自動車流通領域の事業開発に携わり、同社を協業先として検討した際、「事業の継続性に大きな課題がある」と直感した過去がありました。
経営の打診を受けたことで、改めて状況を確認しても、非常に厳しい経営状態であることは明白で、容易に引き受けられる話ではないと感じたのです。
その一方で、こうも思ったんです。解決すべき社会課題は、困難の中にある。絶対に失敗しない道だけを選んでいたら、事業活動を通じた真の社会貢献なんてできないよな、と。
ご存知の通り、100年以上続く自動車流通業界には、中間業者が受け取る高額な手数料や、カスタマーにとって不透明な取引プロセスなど、多くの「不」が存在しています。オートックワンの経営を真に改善するには、その背後にある自動車流通業界の「不」に立ち向かい、抜本的な構造改革を実行しなければなりません。オートックワンの経営に向き合うことは、社会が抱える大きな課題と向き合うことでもある。そう考えました。
そのとき、私はちょうど40歳。社会をより良くするための挑戦をするなら、あまり悠長に構えてもいられません。最後は、クリーンな業界をつくり、まじめに仕事をしている人が報われる世界にしたいという思いに突き動かされるようにして、経営を担う決意をしました。
短期間で2度の停滞を経験し、サービスの確立に苦慮
社長就任後、佐藤社長が最初に注目したのは、車を売りたい人と買いたい人の間に中間業者が介在する流通構造でした。
佐藤:中間業者を挟むと、クライアントは多額のマージンを払わなければならず、査定額が下がります。また、流通経路や利益構造のブラックボックス化が進み、査定額の根拠が不透明なまま契約を急かされたり、契約後に減額されたりと、カスタマーに不利な状況になることも珍しくありません。
そこで私たちは、これまでの経験やノウハウを生かしたDXで、中間業者を必要としないプラットフォームを作ろうと考えました。
最初にリリースしたのが、出品者であるカスタマーが価格を設定し、オークション形式で自動車販売店や個人からの買取希望を募るフリマ型中古車買取サービス「Ullo(ウーロ)」です。売却プロセスを透明化することでカスタマーのストレスを解消し、中間マージンをなくしてクライアントの負担を軽減できるサービスとして自信をもって送り出しました。
しかし、カスタマーが愛車への思い入れを反映しすぎるあまりに、現実的でない価格設定をするケースが多く、予想外の苦戦を強いられました。リリースからほどなくして、クライアントからは「相場に見合わない価格設定で、とても買えない」、カスタマーからは「まったく売れない」というクレームが相次ぐ事態になってしまったんです。残念ながら、予想をはるかに超える不振を理由に、リリースから2ヵ月でクローズを決断せざるを得ませんでした。
その後にリリースした事前入札制の一括査定サービスも、車両情報を取得するたびに料金を支払う仕組みにクライアントが反発し、またしてもクレームの嵐となり、事業の先行きに暗雲が立ち込めました。
ミッションは「フェア・トレード」の実現。カスタマーとクライアントの双方に利益がある仕組みで信頼を獲得
試行錯誤が続く中、佐藤社長が事業のぶれない軸に据え続けたのが「フェア・トレード」の理念です。同社のめざすフェア・トレードとは、人と企業が対等に向き合える社会のこと。
この思想に惹かれて入社した社員たちは、佐藤社長のめざす世界を理解し、Ulloのクローズからわずか1ヵ月で新サービスのリリースにこぎつけます。
それが、登録された車両情報をもとに事前入札をし、上位のクライアントのみに個人情報を提供する「MOTA車買取」でした。

佐藤:「MOTA車買取」は、最大20社が事前入札をし、高額をつけた上位3社のみをユーザーに紹介する仕組みです。これにより、一括査定サービスにあった2つの「不」を解消し、カスタマーとクライアントの双方にメリットをもたらすことができたのです。
1つ目の「不」は、電話の数です。
従来のサービスは「1番に顧客と接触し、高価買取の機会を確保する」ことに最適化されています。大規模なコールセンターを用意して電話攻勢をかけられる資本力の有無で勝負が決まるため、小規模な事業者は取引の土俵に上がることさえできません。
MOTA車買取は、カスタマーとやりとりできるクライアントを3社に限定することで、かける側にも受ける側にも負担だった電話を削減し、規模を問わず多くの事業者が参加できる場を作りました。これにより、相場の上限に近い価格を引き出すための健全な競争の場をつくることができています。
2つ目の「不」は、「比較検討できる」と言いながら、実際には最初に来た買取企業に決めざるを得ない状況です。
一般的な一括査定サービスは、買取企業がカスタマーの自宅に行き、実車査定をして初めて価格を提示します。それまで、カスタマーは最初に交渉に来た買取企業の押しに負けて依頼してしまうのが一般的でした。つまり、納得できるまで価格を比較検討できるサービスと謳いながら、実際には「早く来る買取企業を探すサービス」になっていたのです。
入札は最大20社で、高額査定を提示した上位3社と効率的に交渉ができる。希望すれば全入札額を確認することも可能なMOTA車買取のシステムは、情報の非対称性によってユーザーが不利になるのを防ぎ、納得いく企業に納得できる価格で売却できるようサポートします。
より便利に、不安なく使えるサービスへ。エスクロー決済サービスも導入
電話ありきのサービス形態から1歩抜け出し、関わる人を幸せにするビジネスモデルを確立したMOTAは、瞬く間に業界内で存在感を高めました。そしていま、より便利で安心・安全な取引の実現に向け、さらなる進化を続けています。
佐藤:少し前に自分で「MOTA車買取」を使って車を売却したんです。手前味噌で恐縮ですが、「便利で透明性が高いサービスになっている」と実感しました。一方で、1社20分前後で、3社で1時間前後は拘束される査定の立ち会いが面倒だと感じたのもまた事実です。
この経験から、業界標準の教育を受けたMOTA査定員が1回だけ電話や検査を行って査定をし、出品をサポートする「MOTA車買取Plus」をリリースしました。カスタマーはMOTAの検査員とだけやりとりすれば良いので、時間的にも精神的にもぐっと楽になります。交渉ごとが不得手な方にも喜んでいただけそうだな、と思っていたところ、実際に「駆け引きが苦手でサービスの利用を躊躇していたが、相場を聞いたうえで売却価格を提示できた」「一方的に瑕疵を指摘されて買取価格を下げられるなどの不可解さがなく、納得して取引できた」といったお声をいただきました。サービスを利用するハードルが下がり、初めてでも気軽に利用できるようになればうれしいですね。
さらに、自動車業界特化型のエスクロー決済サービス「あんしん決済」を導入しました。エスクローとは、中立な第三者が代金決済と車の授受を仲介することで、取引の安全性を担保するサービスのこと。フリマアプリ、ネットオークションなどで活用されていますが、中古車流通の世界では先駆的な取り組みの一つといえます。
MOTA車買取を軸とした自動車DX事業における喫緊の目標は、このMOTA決済のスキームを業界に広げていくことですね。あんしん決済が広がれば、「購入したのに納車されない」「売却したのに入金されない」という支払いトラブルを未然に防ぐことができます。
詐欺や倒産による支払いトラブルが起こりえない決済方法を業界のスタンダードにすることで、業界に残された大きな「不」の一つといえる支払いの課題を解消し、健全で透明性の高い業界として真に生まれ変わることができるでしょう。
「世界中に、もっとフェア・トレードを。」私たちはこれからも、自動車流通の不安、不満、不合理、不便と向き合い、その解決に向けて力を尽くしていきます。
取材を終えて
「中古車業界には多くの『不』がある」。その言葉は業界批判ではなく、真正面から向き合おうとする覚悟の表れだと感じました。
赤字が続く企業の再建を引き受けるかどうかで葛藤した40歳の決断。そこにあったのは、勝てる市場を選ぶ合理性よりも、「困難の中にこそ社会的意義がある」という価値観でした。Ulloの失敗も隠さず語る姿勢からは、成功の裏側にある試行錯誤への誠実さが伝わってきます。
印象的だったのは、「フェア・トレード」を理念で終わらせず、事前入札やエスクロー決済といった具体的な仕組みに落とし込んでいる点です。理想を掲げるだけでなく、構造を変える。その積み重ねが業界の透明性を高めていくのでしょう。
車の売却という人生の節目を、より納得のいく体験へ。その挑戦の行方を、これからも見届けたいと思います。
※この記事は2026年2月時点の情報で制作しています
この記事で紹介したサービス
サービス
| サービス名 | MOTA |
| タイプ | 事前入札型 |
| 紹介業者数 | 3社 |
| 仲介対応範囲 | 事前入札で高額入札をした業者の紹介まで |
| 申込後キャンセル | 買取業者の紹介までなので可能 |
| 対応地域 | 全国 |
セールスポイント
- 電話でのやりとりは上位3社のみ
何十社もの買取店からの電話が無く、1社ずつ査定額を聞き出す手間も無いため、少ないやり取りで済みます。 - 最大20社の査定額がわかる
買取店の人と会わずに、最大20社の査定額をWEBで見られることが特徴。 - 下取りより平均約30万円UP
最大20社の買取店が、上位3社に選ばれるように競うため、自然と査定額が高くなるようです。
企業情報
| 企業名 | 株式会社MOTA |
| 設立 | 1999年6月3日 |
| 事業内容 | 自動車DX事業 不動産DX事業 |
| 所在地 | 東京都港区北青山3-2-4 日新青山ビル6F |
| 代表者 | 代表取締役社長 佐藤 大輔 |

