誰もが公平に、適正価格で。利害を超えた中古車流通を目指す

車を売る時も買う時も、駆け引きや情報の非対称性が当たり前だった中古車業界。その常識に疑問を抱き、「正直でシンプル」な流通サービスを実現しようと立ち上がったのが、株式会社アラカンの田中一榮社長です。
ネクステージのCOOとして日本最大級の中古車販売会社を築き上げた経験を持ちながら、あえて独立を選んだ背景には、どのような想いがあったのでしょうか。そして、自動車フリマサービス「カババ」に込めた理念とは。
業界の常識を問い直し、ユーザーと業者が共に気持ちよく取引できる世界を目指す田中社長に、その想いと戦略を聞きました。

駆け引きのない、気持ちいい取引を実現したかった
中古車業界に20年近く身を置き、業界の仕組みを知り尽くした田中社長。カババを立ち上げた背景には、自らがユーザーとして感じた違和感がありました。
田中: 実は、フリマ事業をやりたくて起業したわけではないんです。きっかけは、私自身が車好きだったこともあって、自分の車を売買する機会が多かったんですが、その中で強い違和感を感じていたことなんです。

田中 一榮(たなか・かずえ)氏
株式会社アラカン 代表取締役
2003年に中古車販売大手・株式会社ネクステージに入社。わずか3年で取締役事業本部長に抜擢され、以後COOとして営業部長・人事部長・店舗開発部長を兼任しながら、同社の急成長を牽引。東証マザーズ(当時)および東証一部(現プライム)への上場を実現するなど、組織拡大と経営基盤の確立に尽力した。 2019年3月に株式会社アラカンを設立し、代表取締役に就任。リアル店舗でできるすべてをオンラインで完結させる自動車流通サービス「カババ」を開発し、中古車業界の新たな流通モデルを切り開いている。
前職が上場していたので、役員という立場上、私は自分の会社で車を売買することができませんでした。だから、ユーザーとして他社のサービスで車を売ったり買ったりしていたんですが、その中で毎回あったのが「駆け引き」なんです。
商売は安く仕入れて高く売るのが基本ですから、車屋さんは当然そうしてくる。でも、私は業界のプロとして、そこら辺の車屋さんよりもよっぽど詳しい。「適正利益は取ってくれていいから、最初から気持ちよく取引しようよ」と言っても、向こうは営業活動として安く取ろうとか高く売りつけようとしてくる。
そういうのが面倒くさくて、世の中にもっとシンプルで気持ちよく取引できるサービスがあればいいのにと思ったわけです。
なぜ世の中にそういうサービスがないのか。それは車を売る人と買い取る人、販売する人と購入する人って、利害関係が相反しているからなんですよね。売る人は高く売りたい、買い取る人は安く仕入れたい。販売する人は高く売りたいけど、購入するエンドユーザーは安く買いたい。
さらに、そこに情報の非対称性がある。車屋さんは車の相場に詳しいのにお客さんは知らない。その情報格差を使って安く仕入れたり高く売ったりするわけです。
そこで気づきました。どんなに良心的な会社でも、自分たちがお客さんと直接取引をする仕組みである限り、この利害関係は解消できない。
だったら、仲介に入って固定の手数料だけをいただく形にすればいい。お客さん同士の間に我々プロが入り、適正な価格を提案する。お客さんに寄り添うためには、この仲介という形が一番だと考えたんです。
そういった思いがあったからこそ、結果的にC2C、つまりフリマサービスという形になっただけ。決してフリマがやりたいからフリマにしたのではなく、本当に駆け引きのない、気持ちよく車を売買できるサービスが世の中になかったので、それを自分で作りたいと思っただけなんです。
当時、フリマで車を売ったり買ったりするなんて文化は日本の中に一切なかったんですよ。ジモティーやヤフオクはありましたけど、車のフリマという側面では全くメジャーなサービスじゃない。一部の人が使うだけのものでした。
便利で安全でお得、この3つがセットになっているサービスを作れば、ニーズは絶対にある。世の中に市場があるとかないじゃなくて、我々がこのサービスを提供できれば市場を作れるという自信がありましたね。
固定手数料と効率化――オートオークションに学んだビジネスモデル
ユーザーとして感じた違和感が、やがて一つの確信に変わっていった。しかしネクステージの役員である限り、その理想を形にすることはできない。田中社長はそう気づいたといいます。
田中:ネクステージでは役員として数字を伸ばすという使命を持ってやっていました。会社を成長させることが自分のミッション。でも、ネクステージは、直接自動車の売買を手がける会社ですから、当然、根本に「安く仕入れて高く売る」という商売の構造が存在する。しかし、それでは私が課題に思っていた利害の対立は絶対に解消できない。それで独立を決意しました。
仲介で固定手数料のみをもらい、情報は全部フル開示する。今、我々がやっているサービスは、売る人も買う人も、同じ土俵で取引できるものなんです。
このビジネスモデルを作る時に参考にしたのが、オートオークション会場です。業界最大手の会場を見ると、売り手と買い手双方から合計で平均3万円ぐらい手数料をもらっているけど、営業利益率は40%ぐらいあるんです。何が違うかって、効率なんですよ。マッチング効率が、買い取り屋さんや販売屋さんよりも圧倒的に高いんです。
我々はそれをC2Cに持ってきたものなので、手数料が固定で安い分、効率を上げれば収益が出る。いかに効率よく売り主を集めて、いかに効率よく買主を見つけるか。そこを効率化できれば、利益効率のいいビジネスモデルになるんです。
理念と実証。金儲けではなく、世の中を良くするために
固定手数料で高品質なサービスを提供するカババ。ユーザーにとって魅力的なモデルだが、なぜ他社は同様のモデルを取り入れないのか。
田中: 一つ明確にあるのが、私が金儲けのために事業を立ち上げたわけじゃないということでしょうね。本当に心の底から、世の中にもっといい流通サービスを作りたい。公平で透明で、正直でシンプルなサービス。これを実現するためのサービスという前提で、ビジネスモデル自体を設計しているんです。
収益も含めて、そこを前提に作っているから、儲かるとか儲からないじゃないんですよ。経営者がサービスを作る時の考え方が、出発点から根本的に違う。だから他社が出てこないんです。私がやっているビジネスモデルでやろうとすると、一般的には「これでは収益が出ない」という結論に至るはずなんです。
それでもなぜ私が収益が出せると自信があるかというと、ネクステージという今となっては日本最大の自動車販売会社の中軸メンバーとして、中古車流通の仕組みを日本一詳しく理解している自信があるからです。私はこれを20年近くやってきたので、どこまで効率化すればどれぐらいのコストがかかって、マッチング効率がここまで行けばこの費用でも収益が出る、というのが正確にシミュレーションできる。正直、他の人にはできないんですよ。
そのシミュレーションがあるから、先行投資として投資家から資金を調達して、効率化が実現するまでの期間を乗り越える戦略が取れるんです。
そして、この想いを実証する機会が、10年ぐらい前にあったんです。ネクステージ時代、Amazonで中古車を売るというチャレンジをしました。陸送費から名義変更から保証まで、全部コミコミ33万円というすごいシンプルなビジネスモデルです。0円で引き取った車を整備拠点に入れて、タイヤもブレーキパッドも全部新品にして、悪いところを全部直してから33万円で売る。
最初は結構うまくいったんですよ。WBSとかのテレビメディアが「世界初Amazonで中古車」って取り上げてくれて、毎月100台以上売れました。
でも、すぐに数字が伸びなくなった。理由は、誰もAmazonの中で車を探さないからなんです。Amazonの中で広告宣伝費まで使うと、さすがに採算が合わなかった。
ただ、その時に思ったのは、車は通販で売れるということ。「消耗品も悪いところも全部交換して全部コミコミで33万円です」というのが明確だったから、ユーザーは通販でも買えたんです。いつか全部整ったサービスを作れば、世の中にそれが受け入れられる可能性は絶対にあると感じました。
そのAmazonでのチャレンジが、今のカババを作るきっかけの一つになったんです。「情報の非対称性を解消したい」という理想と、「車は通販で売れる」という実証。この2つが揃って、カババの構想が生まれました。
いい車を揃えれば、ユーザーは来てくれる
フリマで車を買うことに不安を感じる人も多い中、カババは2025年11月時点で登録者数5.9万人を超え、一般ユーザーにも広く受け入れられています。その背景にあるのは、マーケティングに頼らない独自の戦略です。

田中: カババのサイトに訪れるアクティブユーザーは、今、30日間で約120万人にもなっています。
なぜ見に来るのか。それは個人売買で中間マージンも消費税もかからない、日本一安い車がゴロゴロ並んでいるからなんです。我々は「カババ推奨売価」と言って、出品時に出品価格をコントロールしています。一方、普通のフリマサイトはグー、カーセンサーよりも高い車ばっかりで誰も見ないんですよ。
でも、日本一安い車がゴロゴロ並んでいる中古車サイトがあったら、まず見に行きませんか。認知なんかなくても、車っていうのは単価が高いからユーザーは能動的に動くもんなんです。
だから、一般論のマーケティングは必要ない。必要なのは、いい車を多く取り揃えること。いい車が揃っていて、ユーザーがいい車だと理解できたら、売れる。
実際、カババは創業以来ずっとアンケートを取っているんですけど、使い終わった人の「また利用したい」率はずっと90%以上なんです。口コミの紹介で使う人もめちゃくちゃ多い。知ってしまえば使う、というサービスなんです。
ただ、フリマって聞くとまだまだ不安に思う人もいるかもしれません。でも実際は、プロの査定士が車の査定をして、オプションで国家資格を持った整備士が点検整備してから納車する。さらに納車後の保証もついている。
2025年9月には、メーカー保証と同水準の保証範囲をカバーした「カババプラチナ保証」も導入しました。保証期間は最長5年で、全国の提携整備工場による修理ネットワークを完備しています。フリマのリスクなんかどこにあるのって、実はないんですよ。車購入に必要なオプションは取り揃えているので、お客様のリスク許容度によって安さ重視で購入できますし、保証などをつけて安心感重視で購入することもできる、しかもそのオプションはネットで選ぶだけで押し売りもされないんです。
理念で集まり、対話で育てる――カババの組織づくり
「正直でシンプル」な流通サービスを実現するカババ。その理念を支えているのは、70人の社員たちです。しかし、その採用方法は一般的な企業とは大きく異なります。
田中: まず、我々の社員は今70人いるうち50人が新卒なんです。実はうちの会社ってボーナスなくて、年間休日少なくて、基本給のみで、しかもみなし残業も含まれている。つまり、条件は悪いんですよ。
なのに、新卒の募集をかけると結構みんな来てくれるんです。その採用で何をしているかというと、理念採用なんですよね。「我々は日本の中古車流通を正直でシンプルにする。世の中みんな誰もが平等で公平に適正価格で車が売買できる世界を作って世の中を良くする。これが本気でやりたい人だけ来てください」と。
条件は悪いけど、その代わり我々はIPOを目指していて、ストックオプションを渡します。会社が成功して時価総額が4,000億、5,000億になったら、少なくともこのステージにいる社員は全員億万長者だよねと。ある意味、夢と未来の資産形成、この2つで頑張れる子を募集しているんですよ。
そうやって集まった社員に対しては、「誰が正しいかよりも何が正しいか」って言っています。これはドラッカーの言葉なんですけど、マネージャーが言うことを何でも聞けっていうわけではない。やっぱり正しいことをしましょう、正しいと思った人の意見を取り入れましょう、という考えで働いてくださいと定期的に言っています。
あとは、マネジメントっていうのはプロセスだと思うんですよ。やるべき手順をしっかり決めて、そのプロセスを一人ひとりのスタッフが抜け漏れなく行動できているかどうかを見える化する。
うちは直行直帰なんです。スタッフは、自宅からお客さんのところに直で行って、終わったら家に帰る。会社に出勤しません。その代わり、プロセスが全部会社の中で情報共有できるようになっていて、誰が今どこまで仕事が進んでいるのかが全部見える。
マネージャーがやるのは2つ。1つは、プロセスに滞りがある人に対して、「あれ、ちょっとここできてないじゃん。どうしたの」って連絡すること。もう1つは、モチベーション管理。やる気もプロセスの進捗を見れば分かるんです。仕事のやる気がなくなるとプロセスをサボり始めるので、そうした時にマネージャーが会いに行く。普段孤独にやっているので、飯でも食いに行って「どうしたんだ、何があったんだ」みたいな感じで話を聞いてあげる。
仕事の管理と気持ちの管理、この2つがマネジメントだと思っています。
社員との対話も大切にしています。対話を重ねていると、理念が浸透していくんです。そして、その理念を共有した社員との対話から、新しいサービスが生まれたこともあります。
2024年の話なんですけど、その年はめちゃくちゃ厳しかったんですよ。コスト先行なのは事実なので、効率化される前はどうしても先にお金が出ていく。会社はすごく厳しかった。
その時、社員の子が「社長、会社厳しいですよね。このお客さん、相場300万ぐらいの車なのに200万ぐらいで売りたいって言っているから、うちで200万で買い取っちゃってオークションに流せばすぐ儲かりますよ」と、会社のために良かれと思って言ってくれた。
でも、「いや、それをやり始めたら、僕がこの会社を作った意味がなくなるじゃん。我々がやろうとしていることじゃないじゃん」って言ったんです。
「あ、そうですね」って話になって、そこで彼が考えたのが、売れ残った車を買い取り業者で競争させて適正価格で買い取ってもらって、買い取り業者さんから固定の紹介料だけもらう。それなら自分たちの理念を崩さずに収益のプラスアルファを生み出せる、と。その社員との会話の中から生まれたサービスが、今うちが提供している「カババ一括査定」なんです。2024年の途中に立ち上げて、2025年7月に正式リリースしました。今その子が事業部の責任者をやっていて、2025年は10倍ぐらい伸びたんですよ。
IPO、そしてその先へ。フリマを超えた未来構想
理念を貫き、社員と共に成長を続けてきたカババ。登録者数7万人(2026年2月時点)、月間アクティブユーザー約120万人という実績を積み上げ、次のステージへと歩みを進めています。田中社長が描く未来には、IPOという明確なマイルストーンと、その先に広がる大きなビジョンがありました。
田中: 会社としては、やっぱり利用者数が一つのサービスの目安だと思いますので、直近3年以内に年間の取引数を3万台ぐらい、つまり毎月2,500台ぐらいの車が売れていくような状態にしたいですね。
その途中、2028年もしくは2029年にIPOをする、という計画で考えています。
将来的に僕がやりたいのは、世の中の零細の整備工場に無料でお客さんを紹介していくサービスなんです。街の整備工場の一番の課題って集客じゃないですか。だから、カババで買った車のメンテナンスや車検を、適正価格で誠実な対応ができる良質な工場だけに無料で紹介する。
そうすると、カババの信用がまた上がる。顧客がどんどん増える。それが最終的には一番やりたいことですね。
取材を終えて
取材を通じて最も印象的だったのは、田中社長の一貫した姿勢でした。「金儲けのためではなく、世の中を良くするために」という言葉は、決して綺麗事ではなく、ビジネスモデルの隅々にまで貫かれた信念だと感じました。
情報の非対称性を使ったビジネスモデルで成功を収めながらも、それに疑問を抱き続けた。ユーザーとして感じた違和感を、経営者として解決しようとした。その姿勢が、カババという革新的なサービスを生み出したのだと理解できました。
田中社長が描く「正直でシンプル」な中古車流通の未来。その実現に向けた挑戦は、これからも続いていくでしょう。
※この記事は2026年3月時点の情報で制作しています
この記事で紹介したサービス
サービス
| サービス名 | カババ |
| タイプ | 自動車フリマプラットフォーム |
| 取扱件数 | 掲載累計25,000台 |
| 制約手数料 | ※システム利用料55,000円~200万円以下それ以上は11万円 |
| 名義変更代行 | 可能 ※らくらく納車パックに含まれる |
| 陸送サービス | 可能 ※らくらく納車パックに含まれる |
| 決済代行 | 可能 ※基本的にアラカンが代行 |
セールスポイント
- プロがサポートする自動車フリマ
価格設定、出品ページ作成、問い合わせ対応、契約書作成、引き渡し、決済まで手配をすべてカババスタッフが代行。個人間取引で起こりがちなトラブルや交渉ストレスを防ぎます。 - 固定マージンで高く売れる
業者を介さないCtoC取引のため、車種や車両によってマージンの変化がなく、成約時に固定の手数料をもらうだけです。ですので、ユーザー次第で利益率も変えられます。販売価格はスタッフと相談しながら相場に応じて設定可能です。 - オンライン完結で全国対応
査定・撮影・出品・引き渡しまで、すべてスマホとネットで完結。全国どこからでも出品可能で、買い手が見つかればスタッフが納車手配を行います。
企業情報
| 企業名 | 株式会社アラカン |
| 設立 | 2019年3月18日 |
| 事業内容 | 自動車フリマ事業(カババ) |
| 所在地 | 本社 愛知県名古屋市中区栄三丁目7番13号 コスモ栄ビル7階 東京オフィス 東京都千代田区九段南1-5-5 九段サウスサイドスクエア2F |
| 代表者 | 代表取締役 田中 一榮 |

