透明性の高い健全な業界をつくることが使命 オートバックス・スクエアカーズ車買取経営者に聞く

株式会社オートバックスセブンの完全子会社として、2025年7月1日にスタートを切った「株式会社オートバックス・スクエアカーズ」。
再編に伴って一新した名刺の裏には、オートバックスグループが中古車の買取・販売事業に参入した1996年から掲げる理念「正直商売」の4文字が記されています。それは、業界の慣習にとらわれない顧客との向き合い方を追求してきたグループの矜持を新会社が受け継いでいることの証であり、今回の再編の決意の表れでもありました。
本企画では、オートバックス・スクエアカーズを率いる倉林真也代表取締役に、グループの買取・販売事業の変遷と今回の組織再編の意図、今後の展開について聞きました。

中古車事業への参入当初から感じていた、「業界を変える」必要性
長期ビジョン「Beyond AUTOBACS Vision 2032」を掲げ、さらなる進化と成長に向けて事業の転換を進めるオートバックスグル-プ。
その一環として、オートバックスカーズ直営店舗の中古車買取・販売事業を担う完全子会社「株式会社オートバックス・スクエアカーズ」(以下、オートバックス・スクエアカーズ)が設立されました。同社を率いる倉林氏は、グループが買取・販売に参入してすぐ第一線に立ち、その変遷をつぶさに見てきた一人です。
倉林:オートバックスグループは、1996年に中古車事業に参入しました。
背景には、新車に対するカーナビゲーションなどの純正装着が本格化し、私たちの主力事業であるカー用品販売の売上に陰りが見えてきたことがあります。手をこまねいていれば厳しい状態になることは目に見えていましたから、早めに手を打つことにしたのです。その打ち手が、車の買取・販売と車検でした。

株式会社オートバックス・スクエアカーズ 代表取締役社長
1994年株式会社オートバックスセブン入社。カー用品の部門で研鑽を積んだ後、中古車領域へキャリアを転換。以来、16年にわたって中古車事業に携わる。2020年からは株式会社オートバックスフィナンシャルサービス取締役を務め、2023年から同社代表取締役社長。
2025年4月1日、株式会社オートバックスセブン カートレーディング事業部配下に新設された子会社「株式会社オートバックス・スクエアカーズ」の代表取締役社長に就任した。
再成長に向けて中古車販売事業の小売販売セグメントを強化するとともに、直営店舗の運営・管理を通して中古車業界の透明化をめざす。
車検は制度のもとで行う商売ですから、初期投資はかかってもしっかり設備を整え、国家資格取得者を揃えて指定工場になれば、お客様の信頼を獲得することができます。交換部品などに紐付けてお客様にご案内することも、比較的容易でしょう。
一方、車の買取・販売は、大手企業から町の業者さんまで既存プレイヤーがたくさんいる上、業界に対するイメージもクリーンではありませんでした。
さらに、当時は「オートバックスといえばカー用品」のイメージが今以上に定着していましたから、認知の獲得に時間がかかることも明らかです。
とはいえ、当時は「できるか否かじゃない、やると決めたらやるんだ」の時代。私も、必死で事業と向き合いました。すると、中古車業界に対するお客様の漠然とした不信感が非常に根強いことがわかってきたんです。「仕組みがよくわからないから、だまされそうで不安」「ここを信頼して、本当に良いのかな」そんな疑念と葛藤が渦巻いているのを感じました。
業界全体に対するグレーなイメージを払拭したい。それができなければ、買取・販売に活路を見出すことはできない。そのためには、自分たちがクリーンでなければならない──。その時感じた使命感のようなものは、それ以降、約16年に渡って中古車事業一筋ではたらく原動力になったような気がします。
転機は、「アホか」といわれても貫いた「待ち」の査定スタイル
倉林氏が必要性を実感した中古車事業の透明化は、組織の方針とも合致。「正直商売」の理念を掲げて勝負に出ますが、そこに立ちはだかったのが査定の壁でした。
しかし、同社はそれをむしろ好機として、業界の慣習にとらわれない真摯なスタイルを確立します。
倉林:中古車事業に本腰を入れるため、まずはチェーン展開を試みましたが、まったくうまくいきませんでした。理由は簡単。オートバックスのフランチャイズ加盟店にオートバックスカーズの看板を渡して「じゃあ、お願いします」というスタイルだったからです。中古車事業のノウハウが全くないのに「仕入れて販売してください」といわれても、加盟店も困りますよね。
改善点を検討し、最初に着手したのが中古車の価値を評価して買取価格を決定して販売する「査定」のプロセスです。査定の属人化を避け、誰もが同じように市場の状況や車の状態を踏まえて価格をつけられるように、システムを作りました。タブレット端末と測定器を用いて査定する独自のシステム「査定Dr.」の初号機です。
このシステムにより、全国どこにいても同じ査定価格で評価できるようになりました。また、査定額を明記した5日間有効の見積書を提示し、焦らずに検討していただくという、業界の慣習に反したビジネスモデルを確立したのもこのときです。
当然と言えば当然ですが、業界からは「アホか」の大合唱でした。どのお客様も、うちが出した査定価格を他社にもっていって、もっと高く買ってもらおうとするだろうと。
それでもやり続けたのは、お客様が抱く業界への不信感を根底から払拭するには、仕入れから流通、販売に至るプロセスの不透明さを解消するしかないと思っていたからです。査定価格が妥当なのかどうか考える暇もなく、「今日中に決めてほしい」「今すぐ売らないと査定価格が下がる」と急かされて愛車を手放せば、後悔と不信感が残るでしょう。いくらで仕入れて、どのような価格交渉が行われて、どうやって最終的な販売価格が設定されたのかがわかって初めて、納得して愛車を任せてもらえると思いました。
今思えば、カー用品や車検といった複数のサービスの軸があり、中古車事業のみを収益源としていないオートバックスだからこそできる商売のやり方だったといえます。チャレンジできる環境を十分に生かした独自性の発揮によって、私たちは「正直商売を理念に、まっとうな中古車事業をする会社」として認知度を高めていくことができたのです。
直営店舗に事業を集約し、「正直商売」を徹底する
独自の査定システムを使った透明性の高い査定が評判を呼び、中古車事業は波に乗ったかと思われました。
しかし、「正直商売」の理念をフランチャイズの加盟店に浸透させるのは難しく、相次ぐ撤退により再び苦境に。撤退も検討する中で行きついたのは、「直営店舗で、健全で正直な商売を徹底する」という方針でした。

倉林:ボトルネックだった査定の標準化は進みましたが、加盟店である小売業は仕入れた商品を販売して利益を得る仕事。お客様から買い取ったものを再販して利益を得るビジネスモデルと、お客様の決断を待つという考え方がなかなか浸透せず、撤退が相次ぎました。
一時は500店舗に迫る勢いだった加盟店が一気に100店舗ほどになり、事業の撤退を検討したことも一度や二度ではありません。しかし、車検事業が成長していたため、車検の見積もりに来てくださった方の「車検を受ける」「買い替える」「車を手放す」という3つの選択肢に応えられる環境は残したいと思いました。
そこで、車の買取・販売を直営店舗に絞り、店舗の負担にならない買取の仕組みを整えることにしたのです。おかげさまで、お客様の信頼と信用を第一に考える私たちの方針は世の中に浸透し、多くのお客様に愛車をお任せいただいています。
あとはこのまま順調に伸ばしていこうという状況になったのですが、その後、中古車業界では残念なトラブルが相次ぎ、お客様の業界に対する信頼が再び揺らいでしまいました。私たちを含め、すべての買取事業者が車の買取販売を行う意義とは何か。それが問われたと思います。当社にとってそれは、中古車事業に参入したときと同じく、「正直商売を貫き、業界への信頼を取り戻すこと」にほかなりません。それができれば、中古車事業が事業の主軸を担う未来も見えてくると信じていました。
今回の組織再編もそういった思いがきっかけになり、中古車事業を迅速に、かつ機動的に運営するべく、オートバックスカーズ直営店舗の買取・販売事業をオートバックス・スクエアカーズに集約することになりました。
新会社では、安心して車の売買ができ、車検・保険・カー用品取付といったアフターサービスまで一気通貫で提供できる場の創出を進めています。オートバックスを知らない方、名前は知っているけれども来店したことがない方にも気軽に立ち寄っていただける「車のことなら何でも相談できる場所」をめざして、これまでとはまったく印象の異なる直営1号店『オートバックスカーズかしわ大井』もオープンしました。

かしわ大井店にはサービスアドバイザーが常駐しており、これまでの店舗のようにカー用品は並んでいません。大通りに面した大きな窓から明るい外光が差し込み、広々としたフロアに待合・商談スペース、キッズコーナーが設置されています。開放的な環境で、納得できるまでアドバイザーと対話をして愛車について考える。この店舗を皮切りに、中古車販売店の新しい価値を業界に提供していきたいですね。
人間性豊かなスタッフとともに、目指す世界を実現したい
中古車を買うすべての人に寄り添いたいと話す倉林氏。経済的な理由で新車を諦めて中古車を選ぶ人にも「ここで買ってよかった」と思ってもらえるようなサービスをすることが「正直商売」の本質であり、それができるスタッフをより多く育成することが今後の重要なミッションだといいます。
倉林:仕入れた車を瑕疵のない状態で、適正な価格で販売するのは当たり前の話です。一気通貫であらゆるサービスを提供する私たちだからこそできることは何かというと「装備品や整備でその車の価値をあげること」ではないでしょうか。
実際に、ある店舗のスタッフが、バンパーが外れかかった状態の悪い車の査定をしたときの話です。
オートバックスで査定を終えたお客様が「他店にも持っていって比較してみる」と仰いました。するとそのスタッフが、外れかかったバンパーを簡単に修理して「このほうが少しでも良い値がつくかもしれないので、これで査定してもらってください」とお渡ししました。
お客様はその場で「ここで売る」と言ってくれたそうです。
中古車を選ぶ人の気持ちに寄り添って力を尽くした結果、信頼関係が生まれ、自然と愛車の売買を任せてもらうことができた──これは、正直商売の本質を表す象徴的なエピソードです。
「正直」とは、お客様に嘘をつかないことだけではありません。常に誠意をもってお客様に接し、抱えている問題やニーズに応える方法を真摯に探すことも一つです。お客様と愚直に向き合うことによってのみ、お客様の信頼を勝ち取り、事業の成功に結び付けることができるのだと思います。
私たちはこれまで、現場のスタッフにノルマを課すことはせず、「何人のお客様と話ができたか」を評価してきました。これからも、単に商品を売るだけでなく、顧客の悩みを解決することに必死になれる人材を長期的に育てていくことが、正直商売で中古車業界を変えることにつながっていくと信じています。
中古車業界の良心になれるスタッフを一人でも多く育て、すべてのお客様に安心を届けていきたいですね。
取材を終えて
査定額をその場で明示する、売却の決断を急がせない、売った車の数よりもお客様と話した数を評価するなど、業界の常識を覆す革新的な挑戦を続けてきたオートバックスグループ。
お客様の課題解決に寄り添う「正直商売」を貫いて改革の旗手となった同社は、いま再びクリーンで持続可能な業界をつくるための第一歩を踏み出しました。ぶれずにやり抜く同社なら、きっと業界に対する疑念や不安を解消し、中古車売買をスタンダードへと押し上げていくことでしょう。
安心して中古車を売買するには、「どこで」がとても重要。
事業に対する会社の想いやスタッフの人間性もしっかりチェックして、信頼できるお店を選びたいものです。
※この記事は2025年8月時点の情報で制作しています